新型コロナウイルスは間違いなく世界的危機だ。また政府が危機を利用して権力拡大をもくろんでいることにも疑いの余地はない。そしてウイルスが終息した後も、一度手にした力を手放そうとしない政府は必ず出てくる。
100年に1度とでもいうべき危機に立ち向かうには、野党の協力が欠かせない。だが「挙国一致」の名の下に政府に対するチェックが緩んではならない。むしろ危機だからこそ、政府と野党は厳しく対峙しなければならないのだ。
危機になると、民主主義国でも政府に権力が集中する。もっと危険なのは「独裁化」(あるいは民主主義の逆行)が進んでいる国だ。こうした国の指導者は、すでに終身独裁を阻む最後の壁を取り除こうと、コロナを利用し始めている。
例えばロシアでは、プーチン大統領が大統領の座に生涯とどまるべく着々と手はずを整えている。イスラエルのネタニヤフ首相は議会と裁判所の力を引き下げている。欧州連合(EU)で「独裁化」の先頭を走るハンガリーのオルバン首相は、非常事態を理由に、議会の監視が及ばないほど強大な首相権限を無期限で手にするに至った。同氏は今、選挙を停止しようとしているばかりか、自らに批判的なジャーナリストを投獄する権限をも手中に収めようとしている。
そもそも強権政治家は、危機をでっち上げては権力を拡大しようとするものだ。本物の危機となれば、なおさらである。
今回のパンデミックに特徴的なのは、政府にはっきりと抗議する手段が奪われたことだ。例えば「終身大統領」に道を開く憲法改正を発表したプーチン氏は、感染防止を口実に反政府デモを禁じることができる。オルバン氏も、人々が社会的に距離を保ち感染拡大を防ぐ「ソーシャル・ディスタンシング」と選挙は矛盾するという理屈を持ち出して、選挙の停止に踏み切ってくるかもしれない。このように感染予防というもっともな理屈を持ち出されれば、強権支配に歯止めがかからなくなる。
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