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『お金本』 カネには色がないが、使い手には色がある

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お金本(左右社編集部 編/左右社/2300円+税/334ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

経団連(日本経済団体連合会)の1次集計では、大手企業に限れば冬のボーナスの平均額は過去最高なのだという。ほくほく顔の人もいれば、まったくピンと来ない人もいるだろう。不思議なことに、収入が少なくても貯める人は貯めているし、多くもらおうがカネがない人は常にない。それは会社員でも一芸に秀でた人でも同じであることが本書を読むとわかる。

作家の「お金」にまつわる約100編の文章を集めた。窮状を嘆く者もいれば、いかにカネを儲けるか、どのように使うかについて熱く語る者もいる。

夏目漱石の弟子の内田百閒は「こればかりは、どんな事があっても手放すまい」と思っていた漱石の掛け軸を困窮から泣く泣く売るいきさつをつづる。直木賞の由来にもなった直木三十五はいかに働かないでカネを得るかを力説。池波正太郎はサービスを受けたときに少しでもいいから心づけを渡せば皆が上機嫌になり、社会全体がよくなると語る。

後の大家にもカネを持っていない時代やカネがないことを思い悩んだ時代があった。村上春樹は道ばたで3万円をネコババし、芥川龍之介は原稿料の思わぬ安さに落胆する。カネで買えないモノはないといったら言いすぎかもしれないが、大抵のモノはカネで買える。だから、多くの人はカネで悩み、つまずき、転ぶ。

カネをたくさん持っていることが人生の幸せではないと改めて思わせるのが、角田光代。長年つけている家計簿を見返すと、20代は収入がどんなに少なかろうが、酒代だけはケチらなかったことに気づく。毎夜のように酒を飲み、人生の諸問題に悩み、ああでもない、こうでもないと友人知人と語り合っていたあの頃。

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