昨年6月。かつては指定暴力団で“金庫番”を務め、今は貿易業を中心に幅広く事業を営んでいる男性の元に、あるペーパーが回ってきた。
特段、タイトルなどはついておらず、銘柄名や投資方法、投資金額、そして返済方法といった文言が無機質に並んでいた。実はこれ、暴力団関係者のようなアンダーグラウンドの世界で出回っている、投資を募るペーパーだ。
銘柄として挙げられていたのは、ある東証2部上場企業。放漫経営で資金繰りに窮し、自己資本も枯渇するほど追い込まれていた。そんな折、証券会社出身で、増資を専門に扱うブローカーが現れた。
「第三者割当増資をしないか。割当先も探してきてあげる」
こんなふうにブローカーに持ちかけられ、この企業は誘いに乗ることにしたという。
こうした案件は、関係者たちの間で“闇増資”と呼ばれている。増資を引き受ける“投資家”が反社会的勢力であること、そしてアンダーグラウンドという閉鎖的な世界だけで、物事が決まってしまうからだ。
だが、それだけではない。引き受けた投資家が、確実に、大きな利益を上げられる仕組みになっていることもある。
増資スキームをまとめた下図を見ていただきたい。まず、不振企業がブローカーに資金繰りを相談。ブローカーは、第三者割当増資の条件を詰め、冒頭で紹介したペーパーのような形で投資家を募る。

提示された条件に納得した投資家は、第三者割当増資に応じて出資する。ここまでは、投資家が反社会的勢力であることを除けば、通常のものと変わらない。
しかし、ここからが少し違う。投資家は、長期保有する気など毛頭なく、増資のニュースを受けて株価が上がった段階で、全株を売却して儲ける約束になっているのだ。
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