キーロフでの講義の後、私たちが向かったのは、キーロフから南へ車で4時間ほどの所に位置するヨシュカル・オラだ。この街の名を聞いてロシアのどこにあるか言い当てられる人は、よほどのロシア通だろう。
ヨシュカル・オラはボルガ川中流域にあるロシア連邦マリ・エル共和国の首都である。ロシア連邦は83の構成主体からなる連邦国家だ。このうちロシア民族以外の基幹民族から構成される共和国が22ある。マリ・エル共和国は、フィン・ウゴル語派のマリ語を話すマリ人が主な住民だ。「エル」はマリ語で「国」、「マリ・エル」は「マリ人の国」という意味になる。
この地は古くからスラブ族とテュルク族の争い、キリスト教とイスラム教の争いなど民族・宗教対立が激しかったが、1552年にイヴァン雷帝がモスクワ大公国に編入。1920年にソビエト連邦ロシア共和国マリ自治州となる。
驚きのクレムリン
ヨシュカル・オラはマリ・エル共和国のほぼ中央にあり、マリ語で「赤い街」を意味する。街に到着して私たちが最初に目にしたのが、赤色のれんがでできたクレムリンである。これは2009年に整備された新しいものだ。「クレムリン」といえばモスクワの赤の広場にある宮殿を思い出す人が多いだろうが、「クレムリ」とはロシア語で「城塞」を意味し、実はロシア国内にはノブゴロドやニジニーノブゴロド、カザン、アストラハンなどにも存在する。
この地には1584年にイヴァン雷帝の息子フョードル1世によって「ツァリョボコクシャイスク」という名の城塞都市が造られており、もともとクレムリがあったのだ。ちなみに「ツァリョボコクシャイスク」はコクシャク川のほとりにある皇帝の街という意味だという。
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