約2兆円の投資枠を持つ官民ファンド、INCJ(旧産業革新機構)。「官民」といっても、出資の9割超が政府、投資資金は政府保証で調達している。次世代の国富を担う産業を育成・創出するという政策目的のためにつくられた“国策ファンド”である。その投資手法は主に2つ。1つがベンチャー投資であり、もう1つは大企業が抱え込んだ事業の再編だ。
2009年の設立から直近までの10年間で140件、約1兆3150億円(支援決定上限ベース)を投資してきた。このうちベンチャー投資は112件(投資ファンド経由を除く)、2744億円。件数では全体の8割を占めるが、金額では2割でしかない。
これに対して再編案件は12件、7637億円。液晶のジャパンディスプレイ(JDI)、有機ELのJOLED(ジェイオーレッド)、半導体のルネサスエレクトロニクスの3社への投資が合計約7000億円と大半を占める。JDIは経営危機に瀕しており、JOLEDは事業化の前段階。ルネサスでは5000億円近い売却益を上げたが、足元の業績は赤字。INCJに対して「ゾンビ救済」「経済産業省の財布」といった批判がついて回るゆえんだ。
リスク案件に重点投資
では、INCJのベンチャー投資の評価はどうか。
「民間のベンチャーキャピタル(VC)だけではなかなかできないリスクが高い案件や、量産化に多額の資金が必要な案件に投資する役割がある」と、志賀俊之会長はINCJの意義を語る。
実際、投資先はバイオ、電子デバイス、素材、宇宙など事業化の難しい領域が多い。そして意外なことに、19年3月末時点のイグジット分の投資成績はプラスだ。18年1月末時点ではマイナスだったが、14カ月で回収額を376億円積み上げたことでプラスに転じた。個別案件への投資はマイナスだったが、LP投資(VCへの投資)でフリマアプリのメルカリなどの成功案件が寄与した。
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