今年発表されたドイツの「国家産業戦略2030」は、政府の補助金に支えられた中国企業との競争からドイツ企業を守ることを狙いとしている。同戦略では政府が特別に支援する基幹産業が示され、電気自動車(EV)用電池の産業基盤を確立し、企業統合によって規模の経済を追求していくとされた。専門家からは、このような政策は計画経済にほかならず異常だ、との批判も出ている。
だが、問うべきはイデオロギー的な正しさではなく、政策が実際に機能するかどうかだろう。
なるほど、産業政策は経済学者の間では評判が悪い。競争力を失ったゾンビ企業の延命に使われることが多いからだ。しかし、支援対象の市場占有率が高く、戦略的に重要なセクターとなると話は違ってくる。欧州のエアバスと米国のボーイングがいい例だ。エアバスに対する補助金は実際、エアバスがボーイングからシェアを奪うのに役立っている。
独仏政府は少し前、同様の理屈を援用し仏アルストムと独シーメンスによる鉄道事業の統合計画を後押しした。両社が手を組めば、中国の中国中車(CRRC)に対抗しうる強力な鉄道車両メーカーを生み出せる、という主張だった。
だが、統合計画を却下した欧州委員会のベステアー委員(競争政策担当)が指摘したように、アルストムとシーメンスの鉄道事業はCRRCとは国際的にほとんど競合しない。CRRCの事業基盤は、ほぼ中国国内に集中しているからだ。仮にアルストムとシーメンスの鉄道事業統合が実現していたとしても、CRRCからシェアを奪うことはできなかったはずである。
それよりも、規模の経済が見込め、政府の補助金が打ち切りになった後も効果が持続する産業を支援していったほうが、政策効果ははるかに大きい。中でも、近く人工知能(AI)が中心的な役割を果たすことになる産業はうってつけの支援対象といえる。データの蓄積が進めば進むほど、AIの進化は勢いを増していくからだ。
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