韓国と北朝鮮の指導者層はどちらも「祖国統一」を訴えてやまない。そのため海外の評論家にはこの建前を額面どおりに受け取っている者が多いが、あまり真に受けないほうがよい。統一を本気で実現させようと考えている政治家など、まずいないからだ。
理由は、南北の経済格差があまりにも巨大なことにある。1人当たりGDP(国内総生産)は、南北でざっと25倍の開きがある。北朝鮮政府が徹底した情報統制を敷いているのはこのためだ。韓国の同胞が豊かな生活を謳歌していることが国民に知れ渡れば、不満が爆発し体制が崩壊しかねない。
韓国では最近、一国二制度の緩やかな連邦制を皮切りに、対話によって徐々に統合を進める、といった案が語られることが多い。だが、南北の指導者層にはこのような計画に取り合うつもりは毛頭ない。自殺行為になるからだ。
仮に南北が連邦制に移行したとしよう。そうなれば北朝鮮に韓国の情報がなだれ込んできて、国民に韓国の繁栄を悟られる。そうなったら最後、北朝鮮の庶民は韓国の制度下での即時完全統一を夢見るようになるだろう。東欧の社会主義国では1980年代終盤に、共産党支配が崩れれば西側先進国と同じ生活水準が即座に実現するという幻想が広がった。これと同じ状況になるということだ。
南北統一で最も多くを失うのは誰か。北朝鮮のエリートである。たとえ緩やかな連邦制であっても、北朝鮮の体制はすぐさま崩壊し、支配者層は怒り狂った庶民により血祭りに上げられよう。
北朝鮮は凄惨な人権侵害に手を染めている。連邦制に移行し情報統制が緩めば、こうした悪行も表沙汰となる。復讐の標的にされるのはむろん、かつての支配者層だ。
南北統一の地獄絵
また、統一には相当な時間と痛みが伴う。たとえ生活水準が向上したとしても、国民は当局の目を盗んで視聴してきた韓流ドラマのような生活をすぐには謳歌できないことにいら立つはずだ。結果、統一政府には国民の怒りをなだめる“生け贄”が必要となり、蛇蝎のごとく嫌われた北朝鮮の旧支配者層がその役目を負わされる。
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