「絶景」という言葉ではこの景色を言い尽くせない。沖縄本島中部の今帰仁村(なきじんそん)にある部屋数わずか2部屋の民宿「海辺の宿 あまみく」は砂浜に突き出した断崖の上に立っている。バルコニーからの眺めはもちろんのこと、部屋の畳に寝転んでも目の前にはエメラルドグリーンの海しか見えない。
この隠れ家的な宿の存在を知ったのは2015年の雑誌『ブルータス』の記事だった。それ以降、いつも頭の片隅に、この宿があった。
訪問が実現したのは18年12月だった。カーナビに従ってレンタカーを走らせ、今帰仁の狭い道を抜けて宿にたどり着いたときは少し拍子抜けした。白く現代的な沖縄の住宅がぽつんと立っているのみである。宿のご主人は余計なことを語らない物静かな人だった。
宿泊費は素泊まりで2万円以上と高級ホテル並みだが、家族経営の民宿。布団の上げ下ろしは自分で行うし、特にこれといったサービスがあるわけでもない。
だが、洋室と和室にキッチンがあり、バスルームはガラス張りで海が見える。バルコニーにはハンモックも完備。ただひたすら海を眺めているだけで満ち足りた気になるのだ。
ゲストは隣の部屋の家族連れのみ。1階には沖縄産の無農薬紅茶のカフェを併設しているが訪れる人もないようで、恩納村(おんなそん)辺りの巨大リゾートホテルとはまったく別世界である。夕日が沈み、完全に暗くなるまで、名残惜しくひたすら海を眺めていた。
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