この30年でどれだけ多くの変化が起きただろう。ベルリンの壁が崩壊し、自由主義が勝利したように見えたのは1989年だった。時をほぼ同じくしてインターネットが登場し、人類は繁栄と国際協調の新時代に突入すると思われた。「フラット化する世界」という派手なキャッチコピーが世の中にあふれたのは、ついこの間、2000年代半ばのことだ。
ところが世界はフラット化するどころか、反対にもっとデコボコになった。人類は国境を超えて同じ価値観を共有するようになるといわれたが、そうはならなかった。グローバル化の結果、競争は一段と露骨になり、福祉国家は衰退、国際的なルールや枠組みも弱体化した。確かに数字のうえでは民主主義国の数は増えたが、反自由主義に染まる国は増加する一方だ。
グローバル化の恩恵に浴するエリートと割を食った“その他大勢”の溝が深まり、世界の政治は一段と毒々しいものになっている。こんな状況では、人々がグローバル化に反発するのも当然だ。
ただ北米と西欧以外では、グローバル化への幻滅はそれほど広がっていない。何だかんだいっても、アジアの新興国はこの30年で豊かになり、世界の人々の暮らし向きは全般によくなった。
とはいえ、このような“新たなる啓蒙”が今後も進歩をもたらし続けてくれるとは限らない。ルネサンス期に次いで訪れた17〜18世紀の啓蒙思想の時代に、科学や芸術は革命的な発展を遂げた。だが、それと同時に社会の分断は深まり、宗教戦争は過熱。科学者や知識人に対する迫害も増えた。
ルネサンス期以降にこうした反動的な動きが強まったのは、当時の支配者層が急速に進む変化に対処しようとせず、格差の拡大を放置したからにほかならない。
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