映画『クレイジー・リッチ!』が意外な大ヒットになっている。主人公はアジア系米国人のレイチェルで、米ニューヨーク大学の経済学教授、という設定だ。レイチェルは恋人のニックに誘われ、ニックが生まれ育ったシンガポールを訪れるが、そこで彼がアジア屈指の大富豪の御曹司だったことを知る。お堅いニックの母は、息子が“一般庶民”と結婚するのに猛反対で──というアジアの超セレブ社会を舞台にしたロマンチックコメディである。
主要キャストがすべてアジア系(ハリウッドでは異例中の異例だ)である点も大きな話題になった。舞台のシンガポールは西洋の人間にとってはなじみが薄く、中には、アジアにこんなにもスーパーリッチな世界が存在するのを知って、衝撃を受けた観客もいるだろう。
本作で描かれた目もくらむような大都市と、1940年の『シンガポール珍道中』(ビング・クロスビーらが出演)に登場する掘っ立て小屋だらけの漁村を比べてみれば、シンガポールの発展はいかに急速なものだったかがたちどころにわかる。本作に登場する架空のヤン一族はシンガポールの不動産に早くから投資し巨万の富を築いたというが、それも納得だ。
シンガポールの人口は560万人で、経済規模は3250億ドル。経済的な意味では、今やデンマークと肩を並べる。デンマークといえば、生活の質で世界トップクラスに位置づけられる国だ。税率の低いシンガポールはデンマークと違って所得の再分配に熱心でないが、医療や学校の質は高く、住宅関連の補助金も充実している。
『クレイジー・リッチ!』は米国ではアジア系俳優がハリウッドで大成功した画期的作品と持ち上げられているものの、シンガポールでは辛口の意見も多い。特に一般人の反感を買ったのが、ヤン一族の異常なまでの富だ。これを見て、株式売却益に対するキャピタルゲイン課税や相続税が存在しないシンガポールはどこか間違っている、といった声が出ている。
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