米国の長期停滞とリーマン危機の関係について、著名経済学者のスティグリッツ教授とサマーズ元米財務長官が最近、ディベートを行った。金融危機で露呈した構造問題に政策が対応しきれていないという点で、両氏の見解は一致しているようだ。だが私たちは、当時の金融安定化策が貸手側の銀行や投資家にとってあまりに有利だったため、これが長期停滞につながったと考えている。
リーマンショックが起きた2008年9月、当時のポールソン財務長官は不良資産救済プログラム(TARP)を導入した。これは7000億ドルの公的資金で不良資産を買い取り、銀行を救う政策だが、銀行の株式(つまり経営権)は取得しないことになっていた。
これに対し私たちは当時、次のような提案を行った。一般の国民が抱える住宅ローン残高を不動産価格の下落に応じて減額し、結果として資本不足になる金融機関には国が資本を直接注入するというものだ。このほうが税金の使い方としては、はるかに効果的でフェアだろう。事実、ポールソン氏はブッシュ(子)政権の終盤にかけて、銀行に公的資金を注入することになった。だが、同氏はやり方を間違えた。主要銀行に対し、一斉に資本を注入したからだ。
数カ月後、オバマ政権が誕生した。私たちの一人(ソロス)は、脆弱な金融機関に公的資金を注入し、住宅ローン残高を市場の実勢価格に応じて減損すべきだと、当時オバマ大統領の経済顧問をしていたサマーズ氏に何度も訴えた。サマーズ氏は反対した。このような政策は銀行の国有化を意味し、社会主義を連想させるので政治的に受け入れられない、ということだった。私たちは今でも、同氏の反論には納得がいかない。
私たちの案が採用されていれば、株主や債権者には大きな損失が及ぶ反面、中低所得層が抱える住宅ローンの負担は軽減されていたはずだ。このような政策なら、金融危機を引き起こした張本人にツケが回るので、格差も今ほど拡大しなかっただろう。だが、オバマ政権は忠告を受け入れなかった。
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