まだ英国が欧州連合(EU)の完全なる加盟国だった2015年9月。当時、欧州委員会の金融担当委員だったジョナサン・ヒル氏が「資本市場同盟」(CMU)なる構想を打ち出した。欧州統合に向けて60年近い歳月が費やされてきたというのに、単一の資本市場と呼べるものはいまだに誕生していない。EU加盟国の資本市場は大半が弱く、未発達なままだ。CMUという価値ある目標について、ヒル氏は当時、こう記していた。「国境を越えた投資の流れを阻む障壁を明らかにし、問題を一歩ずつ克服する」と。
その後、大きな進展があったとは言いがたい。それどころか、計画は後退し始めている可能性すらある。英国のEU離脱(ブレグジット)によって、欧州が持つ唯一の本格的な資本市場であるロンドンが混乱し分断されつつあるからだ。欧州企業による市場からの資金調達は、大半がロンドンを介して行われている。
ブレグジットによってロンドンの金融センターとEUが分断されるのは、いかにも間が悪い。欧州委員会が指摘していた資本市場の未統一問題をさらに悪化させるからだ。米国に比べると、銀行融資への欧州の依存度は突出している。米国では、企業による資金調達の75%近くが社債市場によって行われている。しかし、英国を除く27のEU加盟国では比率はほぼ逆転。一方、英国の比率は半々で、米欧の中間に位置する。
リーマンショック後に生じた銀行融資の急激な縮小によって、EUにおける企業の資金調達総額は、実質ベースで5分の1も減った。米国でも銀行が財務の健全化を進める過程で銀行融資は多少減ったが、融資の停滞は資本市場がカバーした。米国では企業の資金調達額は増えており、力強い景気回復の牽引役となっている。
欧州では、資本市場が銀行による信用収縮を吸収する境地にはまだ達していない。確かに、欧州中央銀行(ECB)は、中小企業融資の支援スキームなどで、事態打開に最善を尽くしている。ただ、このような政策はECBの負担となるばかりか、量的緩和などの非伝統的な金融政策の正常化を難しくする。中銀頼みの状況に比べれば、より柔軟でオープンな資本市場を創るほうが、はるかに好ましい。
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