1960年以降に生まれた人たちは、日本で初めて「個」ということをとても大事にして育てられた第1世代といってもよい。赤ちゃんのときから個を尊重する育児書で育てられ、学校教育では集団より個を大事にされ、家庭の中でも子ども部屋を当然のように与えられて育った。その第1陣が今年、57〜58歳を迎えている。
彼らは今の日本のサラリーマン社会のほとんど、子育て中の人やこれから老人を抱える世帯のほとんどを占める。その人たちが親を介護するような立場になるとどうするのか。今までは親に一方的に「してもらう」存在だった人たちが、今度は親を介護してあげなければならない。互いの自由や意思を尊重し合っていた夫婦が、親の介護に共同で向き合う必要が出てくる。
平穏無事な世界ではお互いを尊重し合う余裕があるが、介護という難しい問題が出てきたときには、お互いの自由やペースを譲り合わないと成り立たない。外からは見えない、家庭の激変が今起きていると思う。
かつての田植えのように、自分の家だけではできない作業は少なくなった。他人の手を借りることの煩わしさやつらさを知らないで育ったとしても、責められない。私たちの社会が、1人ひとりが単独で、自立的に行動できる社会を目指してきたからだ。
私たちの調査を通じてみても、1日3交代制の中で働いているお父さん、遅くまで勉強している子ども、朝早くに出勤するお母さんが普通に同居している。電子レンジやコンビニがそれを実現させているが、そのことが私たちにどれほど個の自立性をもたらしてくれたことか。その現実を無視して、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のように、家族が同じ食卓を囲むことを理想とするのは妄想に近い。
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