朝鮮の宮中に仕えた芸妓である妓生(キーセン)のドラマ「ファン・ジニ」が日本で放映された2008年のことだった。
番組を見ていた妻が「すごいわ、これ」とつぶやいたので画面を見ると、河を目の前にした断崖絶壁で妓生が舞を舞った後、そこから身を投げる鮮烈なシーンだった。
旅好きがやるべきは一つ。この断崖絶壁がどこにあるか調べることだ。韓国南東部の河回(ハフェ)村にある芙蓉台(プヨンデ)だと判明するまでそう時間はかからなかった。
13年に河回村を一人で訪れたときの印象がすばらしく、18年3月、妻と再びこの地を訪ねた。
日本語ガイドと論文を武器に
河回村は瓦ぶきやわらぶきの家屋をはじめ、李氏朝鮮時代の伝統的な景観が昔のまま保存されている人口200人余りの集落である。
日本ではいま一つ知名度の高くない河回村だが、10年には世界文化遺産に登録され、年間100万人以上の観光客が押し寄せる。
河回村には22時すぎに到着した。タクシーが去っていくと、静まり返った集落には人の気配がない。
村には伝統的な家屋の民泊が20軒ほどあり、オンドル部屋に泊まれる。前回利用した民泊の隣家にあたる「志山古宅」に投宿した。
翌朝、河回村の入り口にある観光案内所では、村内を無料で2時間ほど案内してくれる日本語ガイドを頼んだ。担当は落ち着いた感じの金(キム)さんという女性。
村の家屋は儒教の影響で、家族であっても、男性と女性の居住する家屋を厳格に分離していた。そのため、夫婦が同じ部屋を使うときは事前に家父長に届け出る必要があったらしい。妻が横で「ひぇー」と叫んでいる。
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