中国の「一帯一路」構想は、当初は地政学的な要因から中央アジアや西アジアが主な舞台になるとみられた。だが、最近はグローバルな経済戦略としての性格を強めてきた。その注目度は上がる一方だが、中国政府は陸海二つのルートがどこを通るのかをいまだ明確にしていない。世の中に流布している地図は、新華社や研究者が作成したものだけだ。
あえて詳細を明らかにしない「あいまい戦略」は、多くの国を引き付けるうえで有効だった。昨年5月の一帯一路ハイレベルフォーラム(首脳会議)には、南米のアルゼンチンやチリまで参加した。
原点は近隣外交の修復 TPPへの対抗も
2008年のリーマンショック以降、相対的に世界経済での存在感を高めた中国は外交面で強硬な姿勢を取るようになった。その結果、近隣諸国との関係悪化に直面。局面打開のため、13年10月に習近平国家主席は国有企業トップも動員して「周辺外交活動座談会」を開催し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を含めた一帯一路構想を打ち出した。
構想づくりに走った最大の理由は、米国のアジアでの軍事的なリバランス(再強化)だ。また「中国を外した自由貿易圏であるTPP(環太平洋経済連携協定)に対抗する必要性も大きかった」(中国政府系シンクタンク研究員)。
第二に、鉄鋼やセメントなどの過剰生産物を海外でのインフラ輸出で消費したいとの狙いがあった。三つ目が、長年の為替介入によって積み上がった米ドルを海外に還流させるための投資先づくりだ。こうした課題を一気に解決する枠組みとして一帯一路は案出された。
その施策の資金を供給する仕掛けの一つが、AIIBである。AIIBが15年3月に参加国を募った際には、英国を皮切りに西側先進諸国が続々と名乗りを上げた。インフラ整備に必要な資金が絶対的に不足しているアジアの国々の期待は高く、AIIBには84の国と地域が参加している。
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