小泉純一郎首相のときは、絶好のチャンスだった。
支持率は一時8割を超え、国民から抜群の人気があった。政権は安定していた。景気も回復してきた。彼ならば消費税率の引き上げができたはずだった。
でも、やらなかった。「痛みの伴う改革をする」と口では言っていたが、本当にやらなければならないことからは逃げたんだ。
ちょうど私が政府税制調査会の会長をしていた時期(2000〜06年)は小泉政権時代とほぼ重なっていた。よく話をする機会もあったのだが、「俺は上げない」って。そう私たちの前で小泉首相は言ったんだ。がっかりしたよ。そうして5年半にわたる長期政権の間、ずっと消費増税は棚上げになってしまった。
小泉首相のスタンスは、歳出カット最優先だった。でも財政再建をするほどの歳出カットなどできるはずはなかった。本気でやろうとするならば、国民皆保険や介護保険制度を実質廃止にするぐらいに切り込む必要があるが、もちろんそれは無理だ。だから、あれは政治家の便法だ。過去の首相のさまざまな葛藤と顛末を見ていて、政治生命を懸けるだけの勇気がなかったのではないか。
私たちの頃の政府税調は、少子高齢化時代の税制をどうするかについて、随分と議論をしたものだ。3年に一度、中期答申というものを出して、中長期の視点から日本のあるべき税制を政府に訴えかけていた。そんな議論がなぜ必要かというと、政治家は税体系を考えず、税の特例や例外をあちらこちらで作るから。そうやって税制を穴だらけにしてしまう。だから自民党税調は短期で、政府税調は中長期で、というすみ分けで行こうと認め合っていた。政府税調はあるべき税制について積極的な情報発信をしていた。そんな中で私が発表した論点整理の一つが「サラリーマン増税」と報道されたときは、週刊誌から追い回され、ひどい目に遭った。
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