今年は日本銀行の正副総裁3人が任期満了を迎える。5年前の就任時における各人の発言を振り返ってみると、隔世の感がある。5年前に最も話題に上ったのは、岩田規久男副総裁の「2年でインフレ2%を達成できなければ責任の取り方は辞職だ」という発言であった。岩田副総裁はこのままいけば任期を全うすることになりそうだが、ここで一個人の進退をどうこう言っても生産的な議論にはならない。
あらためて5年前の就任会見時の岩田副総裁の主張を整理してみると、次のとおりであった。(1)インフレ、デフレは貨幣的現象だが、足元のマネーストック(経済全体に供給される通貨の総量)と物価上昇率に関係があるわけではない、(2)インフレ予想を起こさなければデフレを脱却できない、(3)インフレターゲット(物価目標)政策がデフレ脱却には不可欠。
(1)のように、短期的には「量=インフレ率」ではないと言っているので、日銀が5年間でバランスシートを3倍に拡大しても消費者物価上昇率が2%に届いていないことについては、かなり苦しいが弁明の余地はあろう。しかし、(2)と(3)については、この5年間の実験によって、その誤りが検証されつつあると言えるのではないか。
この5年間で一般の人々の「インフレ予想」はほとんど上昇していないが、日銀はすでに「デフレの状況ではない」との認識を示している。また、日銀は2016年に行った「総括的検証」で、「インフレは適合的」であると説明している。これは、「インフレ予想」が先に上昇して実際のインフレ率が後からついてくるのではなく、過去のインフレ率の履歴を通じて「インフレ予想」が形成されるのだと言っているのである。
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