反対203件、賛成わずか6件──。日本の会計基準を定める、企業会計基準委員会(ASBJ)の威信が揺らいでいる。ASBJが提示した新基準の公開草案に寄せられたパブリックコメントの大半が反対意見だった。8月25日のパブコメ公表以降、各所で波紋を広げている。
「パブコメの数が3ケタに達したこと自体が珍しい。反対多数は例がない」(現役の公認会計士)。賛成したのは日本公認会計士協会やトーマツ、新日本、あずさといった大手監査法人のみだった。
問題となったのは、「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」。「3年後に営業利益1000億円以上」といった目標を達成すれば従業員が行使できる新株予約権に関する会計基準の草案だ。
同予約権は、すでにソフトバンクグループや大和ハウス工業などが導入している。「具体的な経営目標と予約権発動が連動することで、従業員の士気向上に有効だ」(前出の会計士)。
これまで明確な基準はなかったが、従業員はおカネを払って同予約権を買うため、発行企業は「社員持ち株会の株投資と同じ」と見なしていた。だが今回の草案では、「従業員が頑張ることを期待しての発行だから、将来の報酬として費用計上せよ」と求めている。
「即刻廃案にすべきだ」
報酬ならば費用計上することになり、利益を押し下げる。「利益圧迫を嫌がり、予約権を発行する企業が激減しかねない。この草案は政府の成長戦略と齟齬(そご)する。即刻、廃案にすべきだ」。A4用紙8枚分の反対文書を出した新経済連盟の小木曽稔・政策統括は語気を荒らげる。予約権の発行が減り、社員のやる気がそがれれば、企業の成長力を押し下げかねない。
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