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ライフ #生涯現役の人生学

不要な物の必要性 「無言も一つの応答」

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昔から“職住一致”でなく“職住隔離”を旨としてきたので、仕事場は別の所に設けている。マンションの1室を借りて渡り歩いてきた。現在の所が15年過ぎ、まもなく契約更新になるので、思い切って新しい所に移ることにした。2カ月ほど余裕があるので、少しずつ身の回りの品の整理を始めた。

大半は本で、こちらのほうは片付けやすい。厄介なのは書類だ。頼まれ事に対し返事をしていないものがかなりある。逆の場合はスタッフが「ナシのツブテ」と表記したファイルに収めているが、さてどうしたものか。かなり年月が経っているものもあるので、思い切って全部破棄することにした。というのは、その内容は今の私には到底実現できない難題が多いからだ。「無言も一つの応答」と、心ならずもへ理屈を立てて、書類一掃を断行することにした。

それでも、返事を怠った書類を1件1件読み直してみると、何とかしたいなという惻隠の情が湧いてくる。じゃあ応じられるのかと自問すれば、とても無理だという自答が返ってくる。そもそも頼み手が頼む相手を間違えているのだ。すぐ断ればいいものを、優柔不断なためにズルズルと滞貨の山に加えてきた。時効のない書類だから宙ぶらりんで、未処理のまま机の脇に積まれている。

都庁に勤めていた頃、知事が突然職場巡回で私の職場に来た。私の机の前に立ち、山と積まれた書類の中から無作為に1枚引き抜いた。自分では読まず私に突き付けた。「きみ、この書類いるの?」、そう聞く。読んだ私は「いえ、いりませんね」と渋々答える。知事は底のほうからもう1枚引き抜いた。「これは?」「いりません」「きみたちはいらない書類ばかり集めているんだね」。知事は笑って次の職場へ移っていった。

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