コメを食べるだけでスギ花粉症を治す──そんな夢のような研究が実現に向けて進んでいる。すでに動物実験では効果が確かめられており、昨年11月から患者が参加する臨床研究が東京慈恵会医科大学などで始まった。
患者はスギ花粉の成分を含むパック米(1食分ずつ小分けされたもの)を毎日1回食べる。2018年の花粉症シーズンまで調べた後、最終結果を公表する。
スギ花粉の成分を含むコメを遺伝子組み換えで作り出したのは、農林水産省傘下の研究機関である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)だ。
アレルゲンを体に取り込んで徐々に体を慣らしていくのは、舌下免疫療法などと同じ。だがアレルゲンそのものを使うと副作用の危険性を伴うため、舌下免疫療法では1回分の投与が少量となり、治療も3~5年と長期にわたる。
これに対して、スギ花粉米は「副作用を抑えるようアレルゲンを安全な構造に変えた次世代型の免疫療法だ」と農研機構の髙野誠氏は説明する。研究で摂取するスギ花粉米はパック米1つに少量(5gか20g)含まれるだけだが、「舌下療法とは単位が異なるほどケタ違いに多く有効な成分を含んでいる」と東京慈恵会医大・分子免疫学研究部の斎藤三郎部長が太鼓判を押す。
遺伝子組み換え技術を利用するメリットはそれだけではない。人体最大の免疫器官である腸にスギ花粉のアレルゲンを効率よく届けられ、「スギ花粉は異物ではない」と体に覚え込ませることができるのだ。通常、口から取り入れたアレルゲンは腸にたどり着く前に消化・分解されてしまう。ところがコメには特有の、胃腸で消化されにくいタンパク質の微粒子があり、スギ花粉米はこの部分にアレルゲンを蓄積しているからだ。
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