米大統領選挙でのトランプ氏の勝因は、一般大衆の多くが自国の支配階級や大手メディアを味方につけた人々にうんざりしたことにある。一般大衆の暮らしが日増しに困窮する一方、ヒラリー・クリントン氏を支援した一握りの富裕層の暮らしはますます豪奢になり、彼らはこれ見よがしのぜいたくをするようになった。選挙戦の構図は、経済成長の果実をめぐる「敗者」と「勝者」、グローバリゼーションの「負け組」と「勝ち組」、「昔のほうがよかったと嘆く者」と「将来はもっとよくなると期待する者」の対立であり、選挙で争えば多数派の前者が勝利することは予測できた。
英国のEU(欧州連合)離脱決定の構図も、「地方」と「都市」、「グローバリゼーションの犠牲者」と「資本から利益を得る者」の対立だった。トランプ現象との共通点は人々の懸念であり、心の内に秘められた危機感だ。外国人から己の身を守り、輸入をストップして外国人労働者を締め出せば、安心して暮らせるという感覚だ。しかし、国境を封鎖すれば、安全が確保されると考えるのは幻想だ。人種的な交わりで脅威が生じることを恐れ、自分たちのアイデンティティをかたくなに守ろうとするのも錯覚だ。
保護主義は戦争につながる
これで米国の覇権が終わったとは思わない。少なくとも今後20年、米国は世界を支配する覇権国であり続け、軍事力では圧倒的な優位を保つはずだ。だが、米国の覇権を脅かす存在が現れる。中国、インド、欧州だ。欧州諸国は団結し、防衛を強化するだろう。
2017年にはオランダとフランス、18年にはイタリアでも、米国や英国と似たような選挙結果が出るかもしれない。EU離脱を国民が選択するように仕向けるポピュリズム政権が誕生するおそれがある。私はそのような事態にならないことを願っている。しかし、ポピュリズムの台頭は世界的な傾向だ。国際貿易を後退させ、東シナ海やロシア、トルコ、パキスタンの周辺地域の緊張を高める。アフリカ諸国でも深刻な問題が生じるリスクがある。医療技術は飛躍的に進歩しているが、気候変動の進行が加速し、被害は拡大するだろう。
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