在位70年の国王が10月に亡くなり、タイは悲しみに包まれている。初めてタイを訪れてから30年が経つが、その間、ずっとプミポン国王だった。洪水やクーデターなどさまざまな問題に見舞われても、国民は「最後は王様がおられるから大丈夫」と、王の存在を支えに乗り切ってきたように見えた。
プミポン国王の誕生日である12月5日は国民の祝日だ。ちょうどバンコクに居合わせたので、王宮へ出掛けてみた。普段はまとまりがないと感じるタイ人だが、ここではみな一様に黒い服をまとい、整然と哀悼の意を表していた。一般の葬儀には普段着で出席する人も多く、服装には無頓着な国民性と思っていただけに、それは一種壮観だった。国王の死去以降、黒服で外出するのが一般化し、黒服バブルも起こったという。
その数日前、次の国王としてワチラロンコン皇太子の即位が正式に発表された。だが、国民から喜びや期待感はほとんど感じられなかった。新国王については、ドイツ生活が長いため、国民にはなじみが薄く、健康に不安もあるとの話がある。
タイでは国王に対する批判は不敬罪に当たり、逮捕・拘束の対象になる。活動家が不敬容疑で逮捕されたほか、将来への不安が現実になったとの声もあちこちから漏れ聞こえてくる。
評判が芳しくない新国王に対し、人気が高いのがプミポン国王の二女、シリントン王女だ。後継者としての国民の望みが王女にあったことは、即位発表への反応でよくわかる。皇位継承権は明らかに皇太子にあるのに、即位までに時間がかかったのは、そのためだとの見方もある。
この記事は有料会員限定です
残り 516文字
