「創業者の言葉にこんな関連の言葉はあったかな」。津賀一宏社長は最近、社史室の学芸員・中西雅子氏にそう聞くことが多くなった。
パナソニックの創業者・松下幸之助氏(故人)は、著書を通じて今でも多くの人に親しまれる存在だ。しかし津賀社長は就任前まで、創業者の熱心な信奉者だったわけではない。実際に社長に就任し、どう経営していくかを「考えに考えた末に、やっぱりここ(=幸之助氏の言葉)に行き着くよな、と(いう感じだった)」(中西氏)。
創業者の著書、いわゆる「幸之助本」の中で、津賀社長が現在愛読しているのは『実践経営哲学』だという。たとえば、全20章の10章目に「自主経営を心がけること」という章がある。パナソニックを事業部制に戻す際には、この章の影響が大きかったと中西氏は指摘する。
「『ああ、結局創業者の言ってはるところに戻っているな』ということを津賀社長はご自身でもすごく実感してはると思います」(中西氏)
虚心坦懐に聞いて旗を降ろす
津賀社長が最近よく口にするのが「素直な心」「生成発展」「衆知を集める」の3つだ。いずれも『実践経営哲学』に出てくる言葉である。
これらのうち「素直な心」は最終章「素直な心になること」で、第1章の「まず経営理念を確立すること」とともに、「ベース中のベースを書いた別格の章」(中西氏)だ。
社長室には「素直な心はあなたを強く聡明にします」との書が飾ってある。創業者の直筆。津賀社長が就任した際、幸之助氏の娘・幸子名誉会長から贈られた書である。
「素直な心」は『実践経営哲学』で「自分の利害とか感情、知識や先入観などにとらわれずに、物事をありのままに見ようとする心」と定義されている。「とらわれた心では判断を間違えて、行動を過つことになる」と書いてある。
この記事は有料会員限定です
残り 725文字
