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消費増税延期の忘れ物 インボイスの導入を進めよ

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  • 佐藤 主光 一橋大学大学院経済学研究科教授
【今週の眼】佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

消費税増税が2019年10月まで延期されることが決まった。この政治判断の是非は別として延期された期間を漫然と過ごすことなく準備すべきことがある。それは「EU型インボイス」(適格請求書)の導入である。インボイスはEU諸国で広く普及しており、わが国でも軽減税率の導入と合わせての実施が決まった。

その特徴は、商品を標準税率、軽減税率対象などに区分したうえで、品目ごとに購入時の消費税額と売り手の登録番号を記載するところにある。簡単に言えば、誰が誰に何を売ったのかをクロスチェックすることで不正な還付を回避する仕組みである。このインボイスがなければ課税事業者は仕入れにかかる消費税額の還付を受けられない。従前の帳簿方式は、消費税を納めていない非課税事業者からの仕入れにも税額控除を認めてきた。よって非課税事業者であっても税込みで売ることができる「益税」が問題視されてきた。

現行制度のまま消費税率が上がれば益税も大きくなり、消費税制度への信認を損ないかねない。まして軽減税率の導入となれば、税率の違いを利用した税逃れが横行する懸念もある。インボイスは消費税の適正な執行に不可欠なインフラなのだ。

インボイスは課税事業者間取引において価格転嫁を円滑にするうえでも有用だ。14年4月の増税時、政府は消費税転嫁対策特別措置法で大手小売事業者などによる買いたたき防止策を打ち出した。たとえば、税抜きの本体価格による交渉拒否は禁止された。背景には買い手の事業者が税込み価格で中小・零細の事業者と仕入れ額を交渉することがある。

現行の帳簿方式では、税込み価格のみを記載した請求書を認めており、仕入税額控除も税込み取引額に税率÷(1+税率)を乗じて算出される。このため取引にかかる消費税と本体価格の区別が意識されにくい。インボイスで消費税額を明記すれば、還付される消費税額もおのずと明らかになる。消費税率が課税事業者間の取引に影響することはなくなるだろう。

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