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公私を分けて罰せられた利家 信長に再登用された理由

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文化都市金沢の創始者前田利家は、ディレッタント(好事家)であっただけでなく、算勘(計算)の達人でもあった。合戦に赴くときもいつもそろばんを携行した。上段2珠、下段5珠の大きなものだ。戦線で必要な食糧、弾薬などの経費を、的確にはじき出しその調達を命じたという。また、アタフタと合戦場に飛び出してきて、戦費の用意のない大名たちには、貸金の便宜も図ったそうだ。

死に臨んだとき、彼は会計担当の部下を呼んだ。まず「大名たちの借用書は全部焼却せよ」と命じた。その後で「オレのために無理をした支出の書類があったら持ってこい」と命じた。担当の部下はビビった。利家の言う“無理をした”(正規の会計法では支出が苦しい)ケースが、かなりあったからである。

部下が恐る恐る提出した書類を、利家は一枚一枚慎重に見た。2種類に分けた。担当の部下だけでなく重職たちもかたずをのんだ。利家にしかられることを予想したからだ。枕元には利家の跡を継ぐ利長もいた。書類を全部見終わった利家は、周りにいる家臣たちに言った。

「オレのために随分支出に無理をさせたな。悪かった」と告げた後、2種類に分けた書類を指しながら告げた。「こっちの書類はこのままでよい。しかしもう一方はこのままではダメだ。オレが死んだら問題になる」と言って利長を見た。

「おまえが前田家を相続した後、前代のオレの治政に批判的だった連中は必ず問題を起こす。問題になるのはこっちの書類だ。公と私はかなり厳しく分けてきたつもりだが、このままではダメだ。担当はかなり苦労したようだが、問題がないとは言えぬ。こうしよう」

と言って、彼は問題を残しそうな書類にすべて署名捺印した。そして利家に「担当はオレのために人に言えない苦労をした。おまえの代になっても、今まで以上に大事に扱ってやってくれ」と言った。利長は承知し、担当の部下は嗚咽した。

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