メルケル独首相が十字砲火を浴びている。
昨年9月、「ドイツは難民を受け入れる。上限は設けない」と宣言したとき、世界中が称賛し、ノーベル平和賞候補の声まで上がった。はるかに遠い昔話のようだ。
ドイツの州議会選挙で「難民拒否」を掲げる極右政党AfDが大きく議席数を伸ばし、ハンガリーは国境線に有刺鉄線の「壁」を構築した。かのトランプ氏もほえている。「ドイツ国民は反乱寸前だ。あの女は放り出されるぞ」。
世間の風向きでころころ変わる。だからメルケル首相は10年もった、といわれてきた。ところが今回は違う。独『シュピーゲル』誌が書いている。「これまで築いた政治資産のすべてを(難民問題で)使い切ろうとしている。しかし、なぜ、今」。
牧師の娘としてのキリスト教精神がある。難民を「壁」の向こうに追いやることは、東独という「壁」を体験したメルケル首相には耐えがたいことでもあるだろう。
それだけではない。火だるまになっても、頑として方針を変えないのは、「大きな経済合理性」を確信しているからだ。難民受け入れこそ最良の国策という信念である。
84歳の労働生産性
東西統合前から、ドイツはトルコやスペインから移民を受け入れてきた。1990年代のユーゴ紛争ではボスニア・ヘルツェゴビナの難民がやってきた。その結果、ドイツにはすでに1650万人の移民が居住し、うち6割が市民権を取得している。
本来、少子高齢化に悩まされるはずのドイツが、おかげで労働力という最大の経済資源を強固なものにすることができた。しかも、15歳以下の人口の3割が移民系だ。彼らが成人し子どもを作れば、国民の半分は“純ドイツ人”ではなくなるだろう。
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