私は今、JA全中(全国農業協同組合中央会)で幹部研修を受け持っている。これとは別に毎年2月にJA広島の幹部研修の講義に行く。
事前に研修生に私の書いた『小説 上杉鷹山』と『小説 二宮金次郎』を読ませ、感想文を書かせる。さらに私が「感想文の感想」を伝える。研修生の読み方がこれでいいのかという確認と、悪ければ正しい読み方を指導してほしい、ということなのだ。鷹山も金次郎も農業改革者だから、TPP(環太平洋経済連携協定)発効後の日本の農業改革に多少は参考になるかもしれない、という主催者の意図なのだ。これがすでに数年続いている。
この仕事のやり方がしだいに変わってきた。というのは、私の読み方が変化してきたのだ。かつての私は両著の作者という立場から研修生の感想文を読んだ。だからこっちが考えもしない受け止め方をされると、こだわったり腹を立てたり、逆に笑ったりした。しかし今年の読み方はガラリと変わった。
それは私が「鷹山と金次郎の立場になって読もう」と覚悟を決めたことである。両著の作者であるということは忘れる。両著の主人公の立場になるということはどういうことか。そもそも私の描いた二人の像は、感想文を書くに値する資格を持っているかが、まず問題になる。が、もし資格に欠けると判断しても、世間を歩いている本に修正を加えることはできない。増版されるようなときでなければ不可能だ。
私はいったん旅に出た人物に原則として修正はしない。したがって研修生が読んでくれた人物に欠陥があるにしても、そのままにして、感想文を読ませてもらわざるをえない。
TPP発効後の日本の農業についてはすでにいろいろな改革案が出ている。最も大きいのは、全中を身軽にして地域JAの自治力を強めるということである。このことは私もかねてから提唱してきた。それはJAの主人は組合員だからだ。鷹山も金次郎も「改革は農(住)民のために行うのだ」と唱え続けた。直接現場で組合員と接する地域JAが、それに即した活動を行うのは当然だ。しかしその活動過程において全国的調整や整合機能が必要になるのは、これもまた必然だ。
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