日本経済にとっての長期的課題の中で、少子化対策と地方再生が特に重要であることは誰もが認めるだろう。政府も人口1億人を維持する目標を掲げて少子化対策に取り組んでいるし、担当相を据えて地方創生に力を入れている。
政府は、この二つの課題を一体として解決しようとしている。2014年9月に「まち・ひと・しごと創生本部」が決定した基本方針では、基本目標として「地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する」ことを挙げている。これを受けて、全地方公共団体は今年度中に「地域人口ビジョン」を策定し、それを実現すべく「地方版総合戦略」を策定・実行していくことになっている。「人口1億人」「少子化対策」「地方創生」は、今や渾然一体となって進展しつつある。しかし、この渾然一体化作戦には問題が多い。
第一に、東京一極集中是正でそれほど出生率が上がるとは思えない。14年時点のデータを見ると、東京の合計特殊出生率は全国最低である(全国平均1.42、東京1.15)。ほかの道府県を見ても、沖縄(1.86)を例外とすると1.6以上は6県しかない。
仮に東京都の人口の1割(130万人)が出生率1.6の地域に移住し、移住先の出生率がそのまま実現したとする。この人口移動によって全国の出生率が上昇する効果はたったの0.005ポイント程度だ。
なお私は、そもそも東京一極集中が日本全体の出生率を引き下げているというロジック自体に疑問を抱いているのだが、ここでは省略する。詳しくは、日本経済研究センターの「大都市研究会報告」(15年7月、ネット上で公開済み)を見てほしい。
この記事は有料会員限定です
残り 817文字
