「JT(日本たばこ産業)が動いた!」。日本企業による海外企業買収が活発化している。9月にはついに日本版「買収王」ともいうべき、メインプレーヤーが表舞台に登場した。JTである。今回のターゲットは、米たばこ大手レイノルズ・アメリカンが持つナチュラル・アメリカン・スピリット(アメスピ)。日本の都市部の若者の間で人気のブランドである。買収金額は6000億円に達する。
「買収対象の売り上げや利益を考えると、あまりに割高でビックリした」と、あるM&Aの専門家は話す。この人物はこれまでJTによる大型買収を評価してきたが、今回の案件には違和感があるようだ。
M&A巧者に対する冷ややかな視線
今回の買収対象はアメスピの米国以外での事業である。この事業の2014年度の売上高は176億円、税前利益は21億円。営業権や商標権の償却に伴う税務上のメリットが1300億円ほど発生するとみられるが、それでも買収金額の高さを指摘する声は少なくない。
JTといえば、M&Aである。日本企業として、その実績はずば抜けている。1999年に米RJRナビスコの米国外たばこ事業(RJRI)を9400億円で買収。07年には英たばこ大手・ギャラハーの買収に2.2兆円という巨費を投じた(図表1)。
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この二度の買収により、海外たばこ事業は急激に成長する。99年以前は営業利益の大半を国内たばこ事業が占めていたが、今ではグループ全体の営業利益の実に66%が海外事業によるものだ。
人口減で先細りしていく国内市場を海外市場でどこまで補うことができるのか。日本企業に共通の課題で、製造業や金融の世界で熱気を帯びる買収合戦は、まさにこの課題を克服するのが目的である。
M&Aで取得した企業が、その後アキレス腱になる例は少なくないが、JTはこれまで高い評価を得てきた。野村証券の藤原悟史アナリストによれば、「投資銀行を使わず、自前でM&A部隊を持っている」ことが大きい。
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