毎年2回、自動車業界がかたずをのんで見守るのがトヨタ自動車と新日鉄住金の鋼材価格交渉だ。
交渉のテーマはトヨタが下請けや協力会社に支給する鋼材の値段だ。この価格が業界の相場を形成する。
日本の鉄鋼需要からすれば、自動車用鋼材の需要は年間1100万トンと全体の1割を占めるにすぎない。ただ自動車用鋼板などは先端技術の固まりで、汎用品の建築用鋼材に比べて収益性が高い。その最大ユーザーであるトヨタとの密接な関係は新日鉄住金の大きな財産だ。
JFEスチールや神戸製鋼所が長期的に日本の鋼材需要は減ると分析する中、新日鉄住金の首脳は「トヨタが国内生産300万台を維持し老朽インフラの建て替え需要があるかぎり、日本の鋼材需要はこれ以上減らない」と強気な見通しを語る。
ただ頼みの綱であるトヨタの国内生産は2007年の422万台をピークに、14年には326万台まで縮小した。今後も国内生産の拡大は見込み薄だ。
そこで新日鉄住金もトヨタの海外進出と歩調を合わせて、00年代から続々と拠点を設立している(図表1)。
拡大する
14年にはアルセロール・ミタルと共同で北米の加工工場を約15億ドルで買収した。インドネシアにも17年に加工拠点が稼動する予定だ。どちらもトヨタが高シェアを誇る市場である。
トヨタに育てられた先端技術
トヨタの厳しい品質管理や軽量化の要求に応えてきたからこそ、新日鉄住金はじめ、日本の鉄鋼業は世界最高水準の技術力を培うことができた。
新日鉄住金にとって自動車向けの最大の武器が高張力鋼板(ハイテン)だ。
ハイテンは普通鋼材に成分調整や加工時に厳格な温度管理を行うことで強度を増した鋼材で、薄くて強度に優れている。
ハイテンそのものは古くからある技術だが、1980~90年代に自動車の軽量化ニーズの高まりと乗員の安全を守る衝突安全規制の強化を受け、両方を満たす切り札として、開発が急速に進んできた。
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