「屋外ゴルフ練習場」大幅減の裏にある相続問題 未経験者がゴルフに最初に触れる場所の危機

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屋外のゴルフ練習場が減っている理由とは(写真: IYO/PIXTA)

東京オリンピックの女子ゴルフ競技で、稲見萌寧の銀メダル獲得を放送したNHK総合の番組は世帯平均視聴率16.4%(ビデオリサーチ)を記録した。ゴルフをやらない人々もオリンピックだからこそ、ゴルフ競技に触れたのではないだろうか。

いままで、ゴルフに興味を持っていなかった若い世代や女性が、ゴルフに少しでも関心が向けばゴルフ業界にとってプラスに働くことは間違いない。その多くの未経験者がゴルフに最初に触れる場所として、身近にあるゴルフ練習場は欠かせない。

コロナ禍でも「3密」を避けられるゴルフは、他の業態に比べて影響は少なく、とくにゴルフ練習場は好調が続いている。経産省が発表した「特定サービス動態調査」の速報値によると、ゴルフ練習場の売上高が6月は前年同期比18.5%となり、9カ月連続で前年を上回った。オリンピックの良い影響もこれから表れてくると考えられる。

「打ちっ放し」を襲う相続問題

ゴルフ練習場事業の未来に明るい兆しが見えてきたものの、屋外型のいわゆる「打ちっ放し」と呼ばれる練習場の数は大幅に減少している。全日本ゴルフ練習場連盟の調査によると、東京都下にあるアウトドアのゴルフ練習場は2020年時点で159場。2007年の233場から3割を超える減少だ。

練習場の跡地がマンションや商業施設に変わることも珍しくない。屋外型のゴルフ練習場が、減少している理由は何だろうか。ゴルフ練習場の事業承継などのコンサルティングをしている、株式会社青山財産ネットワークスの野口忠夫氏によると、大手企業が運営しているゴルフ練習場は別として、個人経営や同族経営のゴルフ練習場が事業をやめる理由として、①相続、②業績不振、③事業転換、などがある。

その中で一番の理由は相続問題で事業承継ができなくなることだ。とくに相続税が大きな足かせとなっている。比較的大きな土地を利用している練習場の相続税を推定するには、その土地の路線価が算定の基準となる。路線価は国税庁のホームページに記載されている。地域により細かく決定されていて、とくに東京23区は基本的に市街化区域のため路線価は高い。

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