富士通・野副州旦社長解任時の録音全文

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大浦:今の色々な質問の中で、いろいろ考え方がお分かりになったと思うんですが。野副さんと人物A氏の関係は非常に深い。ところが人物A氏が参加しているファンドAというのは、あなた自身もこのファンドAというのは怪しいとおっしゃると言っていることはあるわけで、(野副:はい)反社会的勢力とのつながりが非常に濃厚なファンドであるということがはっきりしております。

あなた自身、どの程度とそれを認識していたかは知りませんけれども、金融業界は金融市場、証券市場から、反社会的勢力を完全排除するということで、いろんな手をうっている。おとついの新聞にもでておりましたが、そういう噂のある企業の融資や株の引き上げというようなことまでいっておるわけでありまして、そのために、警視庁、金融庁、証券取引等監視委員会、東証、金融業界がお互いに情報交換をして、反社会的勢力とつながりがあるファンドか否かを一生懸命調べて判定しているわけです。

私どもが得た情報では、金融業界の判定のなかでは、ファンドAは完全なブラックだと。ファンドAがブラックだということは会社Aのアドバイザーだった会社名からの情報としてですね、あなた自身人名君からその情報を得たんではないかという風に思っています。警視庁からの情報では、先ほど山室先生がおっしゃったようにファンドAは暴力団名と関係しているということが伝えられています。

あなたは今年の2月に秋草さんから、ファンドAというファンドは危ないよと聞かされ、あなた自身も、さっきもお話の中にもありましたが、そういう怪しいファンドはやめようということでやめられた、最終的に。聞かされてですね、あなた自身もやめようと、黒川さんや小倉さんにおっしゃったこと(野副:はい)、そういう風に聞いています(野副:はい)。
 
 したがって、ファンドAというファンドが、当社がつきあってはならないファンドだという認識は十分あったはずだ、もし情報が不足しているのであれば、あなた自身もっとそれを調べるなり、誰かに調べさせてですね、はっきりとそこを正しく認識すべきではなかったかという風に思います。

それにもかかわらず、ファンドAの会社名の社長、人物Aさん、ファンドAという名前をつけた会社の社長ですから、その人物Aさんと現在も密接な関係が続いているということは問題ではないかと。あなた自身は、人物A氏個人と付き合っているつもりかもしれませんけれども、世間はそうはとりません。人物A氏と付き合っていることは、ファンドAと付き合っているという風にとられます。

会社名の人名がどうしてあんな程度のことで徹底的に犯罪者として取り扱われたかというのも、その影に反社会的勢力の力が及んでいたということがあったために、ああいう風に厳しい取締りが追求がされたということだそうであります。

あなたがファンドAと関係があるという情報は、すでにわれわれだけではなく、業界や東証あるいは総務省、経済産業省などの人も知っておりまして、公知の事実になりつつある。場合によっては、司法機関の調べが入るおそれもある。それをわれわれが恐れているわけです。

企業、特に当初のような社会インフラを支える大企業は、絶対にですね、こういう反社会的勢力あるいはそれとつながっている者、あるいはそれにつながっていると思われるような者と、一切のかかわりを持ってはならない、知らずに取引を行った場合には即刻取引を中止しなきゃならんという事態に追い込まれると思います。

トップは率先して会社のガバナンスとして実行し、従業員に指導する立場にあるわけですから、その辺は大いに反省しなければいかんのではないかと思います。したがって、当社の社長自らが、反社会的勢力に何らかのかかわりがある人物、あるいは、その疑いがある人物と親密な関係にあるなど、絶対に許されないことだとわれわれは思っています。
 
 会社名の例をみるまでもなく、現在は、反社会的勢力とのつながりがある企業について、司法機関は調べて徹底的にたたいてくるそうです。金融機関は、先ほど申し上げましたように融資や持ち株の引き上げなどを行い、東証は上場廃止等の措置をとるそうです。特にこの7月からより厳しく、反社会的勢力排除を求めるようになってきています。

つまり、反社会的勢力とかかわりをもったという、そのことだけでその企業は倒産してしまう。当社をそのような危険にさらすわけにはいかないとわれわれは思っています。

したがって、これは結論でありますが、大変厳しい要求ですが、あなたは代表取締役および取締役を辞任してもらいたい。これは取締役会の意思であります。

またあなたについては、先ほど山室監査役から指摘があったとおりでマスコミとの過度の接触とかいろいろな問題がわれわれに寄せられていて、それについては今いろんな釈明を聞きましたが、これらの点についても少し度が過ぎるのではないかというのがわれわれの判断であります。

もし辞任してもらえるという場合には、対外的には病気ということで発表させていただくし、病名、入院先等はプライバシーを理由に、一切公表しない。実際に入院してもらってもいいし、しばらく東京、日本を離れてもらってもいいのではないかと思っています。

マスコミがご自宅にどっと押しかけるというおそれがありますし、それと、先ほど申し上げたファンドAの背後にある反社会的勢力がですね、なんらかの動きをして野副さん自身の身辺に危害を及ぼすことをわれわれはおそれているわけですし、まあそういうわけで不在にしてはどうかというのがわれわれの結論であります。

あなたの身分は相談役ということにして生活は保証していくという考えです。特例ではありますが、来年6月までは現在の月額報酬を支給するつもりであります。その後は相談役ということで所定の相談役の報酬を支払います。ただし、ファンドA、関係者との付き合いはやめてもらうし、富士通に敵対的な行動をとったりしないということを条件にしていただきたい。細かいことはあとで安井さんから聞いてほしいと思うのですが。どうでしょうか。
 
 もし辞任してもらえないという場合には、残念ながら、この後の取締役会であなたの代表取締役の解職が最初の議題として決議されることになります。

そうなればですね、対外的にもあなたの解職を解職理由とともに公表せざるを得なくなるわけでありまして。あなたの名誉も傷つくし、富士通も痛みを受けますので、できればそういうことは避けたいと思うわけです。ご家族やお母様も心配されるでしょうから、ぜひですね、穏便にすませたい。

あなた自身は、個人的に信頼する人物があなたの知らないところでたまたま反社会的勢力とつながりがあったということで、悪意はまったくなかったのかもしれませんが、しかしそれは世間には通用しない。それが大企業のトップの立場というものなんだと思います。

富士通を思う気持ちが強いと思いますが、そういう愛社精神があるならば、ぜひですね、この場で思い切って辞任してもらいたいし、それが社長としての立場ではないかというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。

野副:まあ、それは、私自身が、そういうところと付き合ったことがですね、そういうふうに皆さん方のご決定であれば、それをお受けするしかないと思いますし、会社のためだっていうことであれば、私自身の軽率な行為がそういったことで富士通を大きく傷つけたということについては、責任をとるべきだと思います。

ただ、何回も申し上げておりますように、私はその、バックにそういうファンドがいるという前提で付き合ったつもりはありませんし、私自身は、ニフティという会社のあり方なり、富士通という企業というものをやっぱり、できるだけシンプルな構造にしていく、強さを作りたいという思いで、そういうことをやったつもりでございますので、この問題について、私自身は、本当にこう、自分自身が指示を間違ってやったとか、悪いことをやったというつもりはまったくございませんので、まあ。

それが私が選択する唯一の道だというふうなご指摘だと思いますけれども、秋さんそれでよろしいでしょうか。

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