野村HDが米国で推定2200億円損失発生の可能性 株価は上場以来のお幅安、社債も異例の発行中止

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野村ホールディングスは29日、米子会社で顧客との取引に起因し、多額の損害が生じる可能性のある事象が発生したと発表した。当該顧客に対する請求額は26日時点での市場価格に基づく試算で約20億ドル(約2200億円)という。業績に与える影響が判明次第、速やかに公表するとしている。

野村HDが米国で多額の損害発生の可能性

野村HDによると、同取引に関連するポジションの処理や市場価格の変動などにより、金額は今後増減する可能性がある。野村HDと同子会社の業務遂行や財務健全性への問題はないともした。

今回の野村HDの損害は、米株式市場で26日に実行された約200億ドル規模の前代未聞の株式ブロック取引に関連している可能性がある。

ブルームバーグは29日、巨額ブロック取引の背後には、タイガー・マネジメントの元トレーダー、ビル・フアン氏の財産を管理・運営するファミリーオフィスのアルケゴス・キャピタル・マネジメントが取引銀行から200億ドル相当の株式の売却を強いられたことがあると、匿名を条件とした複数の関係者からの情報を基に報じた。

別の関係者は、アルケゴスが野村HDでヘッジファンドなどにサービスを提供するプライム・ブローカレッジ部門の顧客だったと話した。複数の関係者が今回の野村HDの損害がアルケゴスの取引と関連していると述べた。野村HDの広報担当者は公表した事実以外のコメントは控えた。

株式ブロック取引は、同一銘柄を一度に大量に相対取引で売却する取引で、26日の米株式市場では中国のハイテク企業や米メディア大手の株式が大量に売られた。

SMBC日興証券の村木正雄・原貴之両アナリストは29日付のリポートで野村HDの業績への影響について「仮に米国で2200億円の損失が発生すれば、税金関連利益の計上も困難になり、純利益は1700億円程度まで減るリスクがある」と指摘。同証券では今期(2021年3月期)の純利益を4208億円と予想していた。1700億円程度まで純利益が落ち込めば、自己株取得はゼロになる可能性があるとの見方も示した。

株価は16%安と上場来最大の下落率

野村HDは23日に発行条件を決定した米ドル建て普通社債について、発行を中止することも同時に発表した。3本立てで、総額32億5000万ドルを起債していた。損害が業績に与える影響が判明し、適切な開示をした後で再発行を検討する。

野村HDが異例の社債発行中止、起債済みの32.5億ドル-米社損失 (1)

この日の野村HDの株価は売り気配で始まり、一時前営業日比17.1%安の597円7銭まで急落した。終値ベースでは16.3%安の603円と上場来最大の下落率で取引を終えた。

加藤勝信官房長官は午前の記者会見で「個別金融機関の個別の取引内容や財務に与える影響についてはコメントは差し控えるが、今後とも所管の金融庁、日本銀行、当該当局とも情報を共有しつつ状況を注視していく」と述べた。

野村HD損失可能性はクレジットネガティブ、リスク管理着目-S&P

(株価の動向を更新します)

著者:谷口崇子、中道敬

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