「感情労働」の現場を生き延びる 心が疲れていませんか?
意識も変えた。日頃から「実力の8割を出せれば大丈夫」と考え、好調・不調の波がない一定の品質のサービスを心掛け、どんな相手でも気後れせず、余裕を持って応対するようにした。
「ポイントは穏やかに『弱』のアプローチでお声掛けし、相手の様子をうかがうことです」
過剰なサービスは相手の心を乱し、トラブルにつながる。「安定感」にこそ価値があるのだ。
相談時間と場所を限定
自分の感情だけでなく相手の感情ともうまく付き合わないといけないのが感情労働の現場だ。保護者や児童生徒、教員、さまざまな立場の人の心が交差する学校も例外ではない。特に臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーは、プロとして感情と向き合う。
都立武蔵高等学校・附属中学校に勤務する柴田恵津子さんは、カウンセリングの際、相手を脅かさないように心がけ、自分なら悩んだときどのように接してほしいのかを常に考えるという。
カウンセリングで留意しているのは、「急いで話を聞き出そうとしないこと」「すぐにわかったつもりにならないこと」だ。
「たとえ子どもであっても、悩みに関しては相手のほうが先輩だと思って話を聞きます」
カウンセリングは1件につき約1時間。あくまで学校内だけで行う。でも、限られた時間と空間で、十分なケアができるのだろうか。複数の私立学校でスクールカウンセラーを務める滝口のぞみさんは言う。
「不安になれば何時間でも話を聞いてほしいと思うのが人間の自然な感情でしょう。もちろんカウンセリング時には相談者の話をとことん伺いますが、時間外まで相談に応じることはありません。カウンセラーに依存してしまい、逆効果だからです」
依存関係に陥れば、相談者はますます社会に適応しにくくなる。そのためにも、カウンセリングの時間と場所を限定することが大切なのだという。
モンスターペアレントに対しては、「子どもを守りたいという熱い思いがあるのに、どうしたらよいか分からず困っているのです」と滝口さん。柴田さんも、保護者に激しい感情をぶつけられたり、問い詰められたりすることもあるが、
「子どものことを心から心配してのことです。そのようなときは、私はこの局面でどのように協力できるかを考えます」