60歳を超えても「書いて稼ぐ男」の快活な生き方 裁判、町中華、狩猟…独特なルポを連ねる

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『ピロシキはくるぞ!!』

って言ってたけど、ぜんぜんこないし(笑)。イベントで1回販売したら、それで満足しちゃった。

でもこんなに飽きっぽいのにライターだけはもう35年もやってるんですよね。ライターだけは飽きないんだな、と思います。書くのが好きなのか、思いついたアイデアを文章で表現するのが好きなのか、よくわからないんですけど」

北尾トロさんがいちばん恐れているのは、『やりたいことがなくなる』ことだという。

「俺たちの仕事は自転車操業、ペダルをこいでなんぼだから。『今月は休み!!』って思っても、脳は新しい企画を考えちゃってる。面白いことを探しちゃってる。足は止まってないんですね。

だから、面白いモノを見ても、何も感じなくなるのは怖いですね」

まだまだやりたいことがある

幸い北尾さんには、まだまだやりたいことがあるという。

「雑草みたいなところからはじまったのに、ベストセラーを出すこともできたし、いろいろ面白い経験もできてよかったです。ベストじゃないけど、まあまあいい人生だったと思います。

でもまだ『もう1回売れたら今度は、もっとうまくやるぞ』って思ってます。この気持ちはなくちゃダメですね。

『売れなくてもよいものが作れたらいい』とかはダサいから。売れたほうがいいに決まってるんだから」

北尾さんは今でも新しい本が発売される前には興奮状態になるという。

「『本が発売されたら大変なことになっちゃうよ!! まいったな~』って思うわけです。で、実際に本が発売されたらシーンとしちゃったりするんだけど(笑)。

恥ずかしいし、いいかげん大人になれとも思うけど、でも『売れる本を出そう』と思うことはとても大事なんですよ」

と北尾さんは締めくくった。

どこか飄々(ひょうひょう)とした雰囲気のある北尾さんが『作品をヒットさせたい』というガツガツした気持ちを今でも大事にしているのは驚いた。

たしかに筆者自身に置き換えてみても、「売れることがすべてじゃない」と自分に言い聞かせて逃げていることは多い。

「よりたくさん売れたい」

「より多くの人に読まれたい」

と正直な気持ちで作品を作っていきたいな、と思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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