Top Interview
事業の特性にあわせて戦い方を変える
三菱電機のグローバル戦略
山西 健一郎 三菱電機 執行役社長 取締役
日本が活気を取り戻すための条件
伊藤 現状では日本企業はどうしても海外に出ていかざるをえません。でもこの国を潤すためには、もう1回この国のなかを良くしていかなければいけない。それには何が必要だとお考えですか。たとえば、これから労働人口の年齢上昇に伴って女性をいかに登用していくかが1つのポイントになりますが、御社はどのような取り組みをなさっていますか。
山西 女性の活用については、女性が働きやすい会社にすることを重要な経営施策と位置づけて2006年からCP-Plan(Career management & Personal life well-balanced Plan)という社内施策を推進しています。女性の採用数もどんどん増やしていますし、託児所の設置を検討するなど、会社として仕事と育児の両立を支援しながら、女性がさらに活躍できる環境を整えていきます。ただ、残念ながら三菱電機では部長クラス以上の女性が4人と、きわめて少ない。これをさらに所長クラス、役員クラスと増やしていく必要があるでしょう。
伊藤 マクロな話で言えば、安倍政権は「世界でいちばん企業が活動しやすい国をめざす」と言っていますが、企業活動拠点としての日本に足りないものは何でしょうか。
山西 ぜひ、海外企業を誘致しやすくする環境を整えるべきです。日本は治安もいいし、人々は勤勉で親切です。地震が心配だという声もありますが、むしろ地震国だからこそ、技術と対策があります。だから環境はすごくいい。
ただ、投資に対する優遇制度の見劣り、法人税率や土地代、電気代の高さなどが問題です。さらに人件費がかかると、台湾や中国などに比べて倍くらいのコスト差がついてしまう。ですから、せめて経済特区のようなところを設けて、そこに企業を誘致するほうがいい。法人税を下げて、企業を誘致して、消費税は上げるというふうにしたほうが、日本全体にとってプラスになるでしょう。
伊藤 日本から企業がどんどん出ていってしまって、これで日本が本当に強くなるのかなと心配になるときがあります。
山西 三菱電機は、消費地生産を基本としているので、日本で販売する製品は、日本で製造を続ける考えです。しかし、国全体で見れば、とにかく人口を増やさない限り、残念ながら、大きな経済成長は望めないと考えます。
伊藤 2020年に東京でのオリンピック開催が決まったりと明るい話題が続いてはいますが、安倍首相にはいろいろと改革してもらわないといけないことが多いですね。
text: Kiyoko Nagayama / photo: Fumishige Ogata
大阪府出身。1975年京都大学工学部卒業後、三菱電機に入社。2003年生産技術センター長、06年常務執行役 生産システム本部長、08年上席常務執行役 半導体・デバイス事業本部長を経て、10年執行役社長に就任。
邦銀・日系証券会社において長年にわたる資金為替業務を経験後、外資系グローバル企業にて、日本のアジア・トレジャリー・センター立ち上げを主導・統括。アジア地区のグローバル・キャッシュ・マネジメントプロセス導入に貢献。企業買収・売却案件のトレジャリー分野に深く関与。グローバル マネジメント インスティテュート(GMI)ディレクター。