Top Interview
事業の特性にあわせて戦い方を変える
三菱電機のグローバル戦略
山西 健一郎 三菱電機 執行役社長 取締役
事業ごとに異なるグローバル戦略
伊藤 グローバルマネジメントについて話題を移すと、御社は今、世界各地で事業展開をされていますが、地域ごとに収益性や事業領域との親和性は異なると思います。となると事業展開をする地域も取捨選択を図る必要があるように思いますが、そのあたりの戦略をうかがえますか。
山西 今、会社全体では、日本と欧米が全体の売り上げの約80%を占めています。中国を含めたアジアが約15%、残りが中東、南米、オーストラリアです。しかし現地での展開や戦略については、事業の特性によって違います。
たとえば極端な例が自動車用部品と家電製品です。当社の製造する自動車用部品には、スターターや電動パワーステアリングなどがあり、基本的には日本で作っているものと同じものを現地生産して、多くの場合、日系・欧米系の自動車メーカーに納めています。
一方、空調、冷蔵庫などの家電製品では事情が異なります。たとえばエアコン一つとってみても、国や地域によってローカルテイストが異なるため、求められる機能やデザインも異なります。だからそれぞれの地域ごとに開発したり、戦略を変えたりしなければいけない。また、日本製品が備える高い機能をそのまま新興国へ持っていっても、それほど高機能は必要とされず、価格が安い製品が好まれることもある。しかし日本人はすでにある機能を削るのが苦手なので、家電製品などの場合は、現地の企業を買収したり合弁会社を作ったりして、ローカライズされた製品を作ったほうがいい。
このように、それぞれの事業によって違うやり方をとることが現在の当社のグローバルにおける戦い方です。
伊藤 日本製品特有の質の良さが、諸外国でも高く評価されているという話をよく聞きます。
山西 三菱電機の場合、高級ゾーンの製品だけでなく、ミドルゾーンの製品にも高い評価をいただいています。たとえば、中国のエレベーター事業では、三菱電機上海機電電梯有限公司[MESE]で製造する高級ゾーン機、上海三菱電梯有限公司[SMEC]で製造するミドルゾーン機、日本の稲沢製作所で製造する世界最高水準機の3ブランドで展開しており、昨年、これらを合わせた中国でのエレベーターのシェアは、世界的に名だたる欧米メーカーを抜いてナンバーワンでした。エレベーターは特に安心・安全が求められる製品なので、信頼性の高い日本製品へのニーズが高まっているのです。今後もミドルゾーンの製品の割合を増やしていきます。