GMI report No.2
外発的グローバル化のすすめ
キャメル・ヤマモト デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター
部分的外資化を通じた外発的グローバル化のあらすじ
まず第1ステップは「部分最適の色分け」である。組織・人材アセスメントを兼ねて、世界中の拠点・事業・機能の色合い(青か緑か)を把握し、事業上のパフォーマンスと照らしあわせて評価するのだ。このとき、パフォーマンスの良否の原因・理由も解明する。パフォーマンスが良い限り当面は、最小限のガバナンスは効かせつつも、青は青らしく、緑は緑らしくキープして、濁らせないようにする。
次に第2ステップでは「最適部分の拡大」を図る。第1ステップで塗り分けた全体を鳥瞰し、集約によってすっきりさせるのだ。青(緑)の側の優れたリーダーや優れた仕組みに、ほかの色調の青(緑)を統合する(図表1の緑と青の点線)。さらに、近隣の小さな緑を大きな青へ統合することも含め、リージョン単位の統合やIT機能など機能ごとの統合を探求する。
そして最後の第3ステップは「進化の探求」である。一方の色を他方の色に塗り替える、もしくは折衷案を採用するのではなく、青と緑が相互に作用し合う環境をつくることで双方の良い要素をTPOにあわせて引き出せる組織に進化させるのだ。お互いに相手から学んだことを自己に取り入れて、たとえば、緑は青の、青は緑のインターフェイスを自己の外側に習得することで、相手のハートと通じやすくするのだ(図表2)。いわば「緑魂青才」である。これにより、お互いが逆方向から似てくることが期待され(converge to diversity)、そこから真の全体統合・最適への展望が開けるかもしれない。
組織のグローバル化については、一発で理想の姿をめざすビッグバン的な変革よりも、すでに組織内に存在する異質なものをきっかけに、芋づる式に全体的な変化を誘発するようなアプローチが日本企業にふさわしいのではないか。そのアプローチは、非幹部も含めたコア従業員たちのフラットな目線で、まだら模様が含む、内なる外ともいうべき社内事例の比較学習を通じて当該企業にふさわしいグローバル化を見いだす集団的な努力である。このような民主的な組織改革手法は、従来はマネジメントにとってコントロールが難しいものであったが、最新のテクノロジーを用いて社内情報を透明化すれば、その問題もクリアできるであろう。
これは、トップダウンの統合重視の欧米型グローバル化の次善策では決してない。次世代のグローバル化の実験であり、ジャパン・アズ・グローバル・ナンバーワンへの第一歩である。
(photo: Koichi Imai)
東京大学法学部卒業。元オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジシニアアソシエイトメンバー。青山学院大学大学院修士。外務省、外資系コンサルティング企業を経て現職。組織・人材面で日本企業のグローバル化を支援するコンサルティングに従事。『「世界標準」の仕事術』『「世界水準」の思考法』『3年後、残る人 あぶれる人』(いずれも日本実業出版社)、『グローバルリーダー開発シナリオ』(共著、日本経済新聞出版社)、『グローバル人材マネジメント論』(東洋経済新報社)、『稼ぐ人?安い人余る人』(幻冬舎)など、著書多数。グローバル マネジメント インスティテュート(GMI)ディレクター。ビジネス・ブレークスルー大学教授。