EXILE HIROが「広告の祭典」に登壇したワケ 日本のエンターテインメントを世界へ
「日本は市場規模が大きいため、日本のアーティストは長年国内に安住してきた。韓国のように『海外でファンを獲得しなければならない』といったプレッシャーを受けませんでした。でも今は時代が変わりつつある。オリンピックが近づいてきて、日本への関心が高まりつつあります。今こそ、日本のエンターテインメントを世界に売り出す絶好のタイミングと考えたのです」とVERBAL氏。
米国のエンターテインメント業界では、やはり白人が重用される。「輸出」は言うほど簡単ではないように思えるが、「成功のための最も重要な鍵は柔軟性を持ち、パートナーシップに対してオープンであること」と同氏。また、「コンテンツをローカライズすることも必要だろう」とも。それでも、「西洋で日本人アーティストが受け入れられる可能性は概して高くなっているように感じます」。
かつては西洋のエンターテインメントが日本に入ってくるだけの一方通行だった。「僕たちは彼らからインスピレーションを受け、新たなものを生み出した。今度はそれで西洋に刺激を与える番です」。 海外でのブランド確立と並行して、日本ではアーティストやファンを活用してブランドを確立することに活路を見出す。LDHが運営する会費制のファンクラブには100万人以上が登録。所属する150人のパーソナリティーには8000万人以上のフォロワーがいるという。
ビーツ・エレクトロニクスを18〜24歳の女性音楽ファンにアピールする企画では、11名のメンバーからなる「E-girls」をカップリング。アディダスやプーマ、ティンバーランドなどとも、所属アーティストをコラボレートさせて提携商品をプロデュースした。
LDHは電通と競合する
こうした点でLDHは電通と競合するだろう。電通は現在、エンターテインメント・コンテンツと(それに欠かせぬ)ブランド・タイアップ事業の比率を高めようと画策中だ。広告のプロではなくアーティストによって運営されているLDHは、事業構造が大企業よりもシンプル。したがって、大衆の気分をより反映させられると自認する。
「日本の都市部のマーケットは米国のそれとは違います」とVARBAL氏。簡単に言うなら、ヒップホップカルチャーは米国では主流だが、日本ではまだマイナーなのだ。「あるブランドが米国でリル・パンプのようなラッパーとコラボレーションをして、幅広いアピールに成功したとします。でもそのブランドが、彼に匹敵する日本人アーティストを使って日本市場で同じアプローチをしても失敗するだけでしょう。そうしたファンの層が極めて狭いからです」。
先鋭的でも個性が強過ぎず、ニッチ過ぎないアーティストが受け入れられるには、消費者にある種の感受性が必要だ。 例えば、ゲス(Guess)はブランド再活性化のためにLDHと協働した。
米国ではエイサップ・ロッキーとコラボレートしたが、日本で組んだのはイメージが一段とソフトな7人組ボーイズバンド「Generations」。「彼らのルックスもダンスもストリート。そして多くのフォロワーを持っていますから」(VERBAL氏)。
Campaignは電通の元グローバル・エグゼクティブ・クリエイティブ・アドバイザーである鏡明氏に、(広告代理店とは異なる)LDHのような企業の果たせる役割について尋ねた。同氏は「LDHがシステムを変えようとしているのはポジティブな動き」とした上で、「重要な要素はプランニング機能。この分野は代理店が最も進んでいます」。
「ほとんどのブランドが全体的なコミュニケーションに関してプランニングを必要としている。LDHにも優れたプランナーがいることを期待します」。更に「エンターテインメントの才がある者をブランディングに活用するのは目新しいことではない。アーティストを独立したプラットフォームやメディアでフィーチュアするといった、独自の活用やポジショニングが必要でしょう」とも。
LDHはポップカルチャーがベースの会社だが、日本の伝統に多くの価値を見出す。「日本」というブランドは何か、またどうあるべきかとHIRO氏に問うと、(明らかに使われ過ぎている)「おもてなし」の概念を挙げ、「それは他者や職人気質への敬意を意味します」。「翻訳が難しかったり日本独特だったりする概念こそ、僕たちを日本人として規定する精神でしょう」とVERBAL氏。
HIRO氏はこうも話す。「東京はもはや、日本のポップカルチャーの中で独占的な地位にはいません。今は、新しいことを始めるのに東京にいる必要はないのです。僕たちは今、もっと外の世界に目を向けています。日本中の地方都市にも目を配る良い機会だと考えています」。
(翻訳・編集:水野龍哉)
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