「人間以外との恋ゲーム」にハマる若者の心理 なぜハトやゾンビとの恋愛なのか

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流行している3つ目の理由として、最近の若者はキャラクターに自分の好み・理想を投影させるのが好きである、という傾向が挙げられる。たとえば、近年流行している「おそ松さん」は、6人とも外見上はほとんど無個性なのに、それぞれまったく違う性格、キャラクターを持っており、ファンはそれぞれ自分の好きな「推し松」を持っていた。

「ゾンビ彼女」や「うまのプリンスさま」といったゲームには、キャラクターを自分好みに「育成」するという要素がある。対象にかかわらず、自分の好きなイメージをその中にあてはめ、自分だけの存在へと育成することを楽しむ傾向が強まってきている。ありのままの対象を愛するのではなく、傷つくリスクの低い自分だけの「推し」を作り出す「恋愛自己完結型若者」像が見られるのではないだろうか。

このように、現代の若者たちは、実は恋愛には興味があるものの、「ゆとり世代」「恋愛離れ」と揶揄される中、リアルな恋愛の面倒くささも手伝って、恋愛に興味があることを表明しづらい中で生きている。奇妙な恋愛ゲームで遊ぶことで、恋愛をネタとしてとらえているふりをして、さらには自分の理想をキャラクターに押し付けて、傷つかない自己完結的な世界を楽しんでいるのかもしれない。

原田の総評:若者たちの「生々しさを隠す隠れ蓑」

若者研の現場研究員による、ちょっと変わった恋愛アプリにハマる若者のレポートはいかがでしたでしょうか?

それにしても、ハト、ゾンビ、馬、エジプトの神……ゲームの制作サイドのあの手この手の発想にも感心しますし、それらアプリを見つけ出し、熱中する若者たちのアンテナの鋭さにも感心します。

さて、現場研究員のレポートにより、若者たちがさまざまな理由でこの少し変わった恋愛アプリにハマっていることがわかりました。

普段から若者に接している私が感じるのは、たくさんの理由の中でも最大のヒット理由は、この変わった恋愛アプリが、「生々しさを隠す隠れ蓑」になる点にあると思います。

今の若者たちはさまざまな理由から、昔以上に大変恋愛し難い環境に置かれるようになってきています。とは言え、現場研究員のレポートにもあったように、若者たちは恋愛に興味がなくなったわけではなく、本音では恋愛をしたいと思っています。

そういう息苦しい状況下、空き時間に恋愛アプリをやってみるのは、程良い時間潰しと息抜きになります。

基本的には暇潰しですが、時にきゅんとしてみたり、ちょっとはまってみたりするのも気持ち良い。これが普通の恋愛アプリだと、ちょっと「ガチ中のガチ」と周りから見られかねないし、そう見られてしまうと思っている自分もいて、気持ちの良い暇潰しとはならなくなってしまうケースもある。

でも、こうした「変わり種恋愛アプリ」だと自虐ネタになり、周りの友達にも言い易い。つまり、「本当は恋愛したい。でも、できない。周りに恋愛にがっついていると思われたくもない。でも、ちょっとした疑似恋愛を楽しみたい」こうした若者たちに恋愛に対する生々しい感情を隠す
隠れ蓑として、普通のガチンコ恋愛アプリより、こうした変わり種恋愛アプリが普及してきているように感じています。

これからもこうした若者の機微に応えた、どんな変わり種恋愛アプリが登場するのか、注目していきましょう。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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