佐賀県「JAさが」、地域農協で初の持ち株化へ 国が推進する農協改革に対応

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新設の持ち株会社は、アグリ・生活関連と食品加工に分ける。アグリ・生活には自動車販売のJAオート佐賀や葬祭事業のJAセレモニーさがなど6社が入る。6社の売上高に当たる事業収益は177億1400万円。

食品加工は、JAフーズさが、ジェイエイビバレッジ佐賀、JAさが富士町加工食品の3社で同210億2千万円。コンビニ向けカット野菜事業が好調な富士町加工食品は三養基郡みやき町に第2工場を建設中で、飲料事業や食肉加工と連携し、販路開拓や商品開発の可能性を広げることが期待されている。

将来的には、アグリ・生活関連のグループは(1)アグリ(2)購買(3)葬祭の3社に集約し、食品加工は一本化する「第2次再編」を検討している。

佐賀青果市場など、JA以外の出資者がいるグループ会社は今回の再編の対象外だが、100%子会社化への手続きが完了次第、HD編入を協議する。水稲や園芸苗製造のバイオテック富士(佐賀市)は株式取得が理事会で承認され、HDに編入される見通し。

Aコープ佐賀のスーパー店舗事業は、福岡、大分の店舗を管理するAコープ九州(福岡市)と合併。佐賀牛の海外輸出やインバウンド(訪日観光客)誘致の役割を担う「佐賀牛レストラン 季楽(きら)」などのレストラン事業部と食肉加工のミート事業部は独立分離し、HD傘下となる。

金原組合長は「HD化で各社が持つ強みや力を集約し、農協の使命である農業生産の拡大と農家所得の向上実現に向けた再出発にしたい」と話す。

「経営の主導権を渡さない」という意思の表れか

【解説】

JAさがが持ち株会社制度への移行に踏み切る背景には、農業の競争力強化を掲げて改革を迫る政府、自民党と、全中や全農などJA全国組織とのせめぎ合いがある。

昨年秋に規制改革推進会議が示した案は、信用事業の譲渡や購買事業からの撤退が明記され、「改革案ではなく、解体論だ」(JAさが幹部)と猛反発があった。農家や世論が納得する改革を自ら進めることで、経営の主導権を渡さないという強い意志が透ける。

子会社はこれまで、建設事業のノウハウを生かした大型機械によるタマネギの定植・収穫作業を代行したり、カット野菜の増産で裏作キャベツの作付け拡大に貢献したり、さまざまな成果を上げた。ただ、広く知られておらず、成果の“見える化”も課題だった。

昨年11月、「協同組合」という組織形態がユネスコの無形文化遺産に登録された。「社会問題に創意工夫あふれる解決策を編み出してきた」という理由だ。JAは担い手不足や高齢化といった難題に直面する。再編を機に農家所得の向上に全力を挙げ、農家や消費者に必要とされる組織への「改革力」が問われている。

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