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今注目される「サクセッション・プラン」の意義とは?

●サクセッション・プラン

酒井:上場企業のトップ交代の際に、後継者計画(いわゆる「サクセッション・プラン」)の透明性について話題となることが多くなってきました。

前述のアンケート意識調査によると、「貴社では、サクセッション・プランについて、取締役会または指名委員会で議論していますか」という質問に対し、「ほとんど議論していない」という回答は72%に上りました。後継社長指名は、日本においては長い間、社長の専権事項とされてきましたが、近年ではサクセッション・プランが注目されています。

泉谷:これまでの後継社長指名というのは、現社長が誰かを指名し、指名された部下は「青天の霹靂です」とか言いながら辞令を受けるというパターンです(笑)。これじゃダメです。取締役会が最も重要な、監督しなければならない問題は、代表取締役の選任と解任です。そこを切り出して委員会にして「指名委員会」ができています。今は、選任と解任の透明性、客観性が求められています。

川本:いちばん重要なことは、その時代になぜこのトップを選んだのかということが説明できるかどうかです。トップにふさわしい人の要件を全部出し、どういうプロセスと基準で選んでいくのかということもはっきりさせる。そこに説得性がなければ、それこそ社外取締役が質問すべきでしょう。要件や基準がハッキリすると、次のトップ、その次のトップの候補も考え出します。そうするとある程度の人材のプールを持っていなければならず、この候補はこういう経験が足りないということで育成プランにつながっていきます。

澤口:サクセッション・プランは、後継者の育成の話に尽きるわけではなく、後継者の「慎重な選定」ということです。当然ですが、サクセッション・プランを主導するのは現社長であってもよく、次は誰が適任かという検討も現社長が一次的にしても問題ない。ただし、そのプロセスに透明性を高めることが、今求められていると私は理解しています。

泉谷:サクセッション・プランというのは、それがあるかないかの問題だけではなく、社長指名に関する一連の討議のプロセスが非常に大事ですね。サクセッション・プランがなければまず第一歩が踏み出せません。

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