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形だけのガバナンス改革は不要
企業価値向上につながる取締役会改革とは?
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コーポレートガバナンス・コードの適用が2年目を迎えている。形だけでなく、いよいよ本当の意味での改革が求められるようになると言えるだろう。一方で、取締役会の運用や取締役人材の確保・育成などについて課題を抱える企業も少なくない。その解決のためには何が必要なのかを議論するために、KPMGジャパンは2017年2月23日、東京で、取締役向けコーポレートガバナンスセミナー「企業価値向上に向けた取締役会改革」を開催した。以下に、当日のプログラムの一つであるパネルディスカッションおよびパネリストへのインタビューの模様を紹介する。
主催:KPMGジャパン
参加者:上場企業 取締役 約170名
パネリスト:泉谷 直木 氏/アサヒグループホールディングス株式会社 代表取締役会長 兼 CEO
川本 裕子 氏/早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授
澤口 実 氏/森・濱田松本法律事務所 パートナー
モデレーター:酒井 弘行 氏/KPMGジャパン CEO、有限責任 あずさ監査法人 理事長

変わりつつある取締役会とぶれてはいけない企業の判断基準

●取締役会のあり方

酒井:コーポレートガバナンス・コードの適用以降、日本企業の取締役会運営は変わりつつあります。独立社外取締役の増員、取締役会の付議事項絞り込みによる審議時間の確保など、より戦略的な検討を取締役会にて主導できる環境は整ってきています。

しかし実際に重要な事項について、取締役会で活発に議論できているのでしょうか。パネルディスカッション前に会場で行ったアンケート意識調査によると、「取締役会では経営課題に対して十分な議論が実施できていますか」に対し、「十分できている」との回答はわずか5%でした。まず取締役会運営の現状と課題についてお聞かせください。

川本:日本では長く、株主の利益が他のステークホルダーに比べて軽んじられていた傾向がありました。それが現在リバランスされている過程です。取締役会は、投資家からの要請と人的集団としての運営上の要請が正面からぶつかることもあるはず。それゆえに企業を統率していく中核、作戦本部として機能することが望まれています。これまでは執行側が経営会議や常務会などですべて意思決定し、取締役会では形式的な承認とするところが多くありました。それが今大きく変わりつつあります。誰が、いつ、何を、なぜ、どのよう議論するのか、のすべてが変わるはずで変化は小さくないはずです。

泉谷 直木 /アサヒグループホールディングス株式会社 代表取締役会長 兼 CEO

泉谷:実際の取締役会の運営は、議長の采配が強く影響します。たとえば、出席取締役に何度も声掛けすれば意見も出てきますが、ただ話を振ってすぐに出てくるものでもないので、しばらくのサイレントタイムを議長がいかに我慢できるかも重要です。

そもそも取締役会のミッションとは、企業の持続的成長と企業価値向上に資すること。議論をとおして、将来の不確実性を排除・縮小することで、リスクを低減するわけです。それを実現するために取締役会改革、ガバナンス改革をしていくということです。

課題に関して言えば、株主に対して、どうやって満足度を高めるのかという議論を日本の企業はあまりきちんとしてきていません。このことをきっかけにガバナンスの議論が起こっているのだという事実をまず認識しないと、本質的な議論の手前で止まってしまうでしょう。

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