KPMGジャパン

形だけのガバナンス改革は不要
企業価値向上につながる取締役会改革とは?
KPMGジャパン

拡大
縮小

社外取締役の選任は経営陣の人脈が問われる

●社外取締役の適任者不足

酒井:コーポレートガバナンス・コードで独立社外取締役の複数選任が求められていることもあり、社外取締役の選任割合は大きく増えました。これに伴い、社外取締役の需要は今後ますます大きくなってくると考えられます。

KPMGによる「コーポレートガバナンス実態調査2016」によると、2016年8月時点の東証一部上場企業における社外取締役の選任割合は、全体で26%(人数4,743名)、指名委員会等設置会社に限ると52.5%となっています。社外取締役については、適任者不足が叫ばれ続けています。

川本:これは日本の労働慣行に起因する問題が多いですよね。取締役が従業員の延長で、執行役員と取締役を区別できていない企業もあります。社外取締役がどういう立場なのかという理解がなかなか進まず、ベストな活用方法がわからない、その結果、議論に時間がかかるという問題がまずあります。また、適任者がいないと悩んでおられるのは、逆に言うと、それまでの経営陣のお付き合いがいかに狭かったかということを反省されたほうがいい面もあると思います。これも日本の労働慣行的問題で、幹部が一社にしか勤めたことがないなど、内向きだとなかなか人脈が広がらないこともあります。

澤口:経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会では、「現役CEOも一社ぐらい他社の社外取締役をしてもいいのではないか」という報告が出ています。確かにほかの会社の経営や取締役会の姿を見るというのは、自社のためにとっても、失う時間に比してメリットがあることも少なくないと思います。

泉谷:現在当社には3名社外取締役がおりまして、それぞれ、グローバル、ダイバーシティ、グローバルとローカルという視点でお願いしています。社内にはいない人材で、取締役会の多様性を確保している。ただ、経営環境が変化すれば戦略を変えていく。つまり、戦略とセットでどういう方に来ていただくかを考えなければならないのです。

ただ、その一方で現実的に人材確保は課題です。やはり現役バリバリの経営者・先生方が最も望ましいが、候補者はそう多くはいない。社外取締役の人材市場を拡大させることが必要でしょう。

次ページエグゼクティブセッションの活用法
お問い合わせ