「働き方改革」、でも教員は「蚊帳の外」の真相 公立校の「残業代ゼロ」明記した「給特法」
それゆえ、教員の労働時間をめぐる裁判では、過労死(公務災害)については、授業準備なども残業にカウントされるのに、残業代については、超勤4項目の範囲外などの理由から、請求が認められて来なかった。
残業代が支払われないし、そもそも正規の残業とはされていない――。結果として、学校現場では十分な労務管理が行われず、長時間労働が蔓延している。
今春で6年目になる小学校教諭・岡本和子さん(仮名)は、毎月50~60時間ほどの残業をしている。現在こそ落ち着いているが、前任校では月80時間を超えていたそうだ。もっとも時間がかかるのは授業準備。「学校によっても違いますが、前任校は研究授業(ほかの教員も訪れる公開授業)に熱心で、発表直前は日をまたいで帰ることもありました。今は一度経験している学年なので、教材などを再利用できることが大きいです」
とはいえ、何年も使いまわせるわけではない。4年に1度の大幅な教科書改訂や、10年に1度の学習指導要領の改訂に対応する必要があるからだ。
給食や昼休みも子どもたちと一緒のため、準備を始めるのは、児童が下校してから。会議や事務仕事をこなしつつ、体育や音楽なども含め、毎日5コマ前後に取り組む。
「たった45分の授業に、これだけの準備がいるとは思いませんでした。教材研究(授業準備)って終わりがないんです。手を抜くこともできますが、子どもたちのことを考えたら、できないじゃないですか」
ここに教員のマネジメントの難しさがある。学力にバラツキがあっても、全員が理解できる授業――。達成できないと割り切れれば良いが、真面目な人ほど、深みにはまり込んでしまいがちだ。
一方、タイムカードなどで勤怠を管理している学校は1割ほど。終わりがない仕事であるにもかかわらず、管理職は教員の労働時間を正確に把握できていない。仮に過労で亡くなり、公務災害を申請しても、証拠がなくて認定されない可能性がある。
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「教員の長時間労働は、単なる労働問題ではなく、日本の将来にかかわる問題です」と語るのは、日本教職員組合(日教組)の藤川伸治労働局長。教師に自己研鑽する余裕がないと、十分な教育を施せないというのがその理由だ。
「もはや、知識はネットで検索すればいい。今後、学校には、コミュニケーション能力や、世の中の見方を教えることが強く求められるでしょう。教員には今まで以上に、人間としての総合力が必要になる。ですが、現状は教員が疲弊していて、自ら学び、考え、子どもたちに伝えることが非常に難しくなっています」(藤川局長)
実際、現場の教員には、同様の危機感が広がっている。数年前、過労で医師からうつ病の一歩手前と診断された、20代後半の高校教諭・西村香さん(仮名)は次のように語る。
「当時は家に帰って寝るだけ。目の前のことだけしか考えられなくなりました。社会科の先生なのに、社会のことが目に入らない。教員が世間知らずと言われるのは、こういうことなんだなと思いました」