中国の地方政府が「破綻する」という悪夢 代表格は江蘇省か
ストレスの兆候
江蘇省政府の財政に重圧が加わっているさなかで、省内主要企業の中には経営が行き詰まり、当局に救済を求めるところが出てきている。中国最大の民間造船会社、中国熔盛重工集団<1101.HK>は今月、地方政府に財政支援を要請した。
中国最大の太陽光パネル・メーカーの子会社である無錫サンテックパワーはことし、破産申請を行った。複数の関係筋によると、同社は江蘇省無錫市の政府に財政支援を求める意向もある。
ストレスが高まっている兆候は他にもある。中国メディアによると、経営難に陥った一部の地方企業は個々の職員に最大60万元(9万7800ドル)の資金調達ノルマを貸し、達成できない場合には勤務を許さないため、多くの職員が親戚や友人に金の工面を頼んでいるという。
地方政府にとっての主な資金調達手段は、借り入れか不動産デベロッパーへの土地売却しかない。地方政府は地元の経済開発を担っているが、税収の4分の3は中央政府に吸い上げられる。
しかし無錫市のある村の住人によると、市政府はデベロッパーに売るためとして住宅を破壊して更地にしているが、家主に収用代金を支払うための資金が不足している。「私の父は600平方メートルの土地を持っていたが170平方メートルを失った。市政府は父に『あなたは住宅を多く所有し過ぎている』と言って支払いを拒んだ」という。
中央政府は地方政府に対する銀行融資を絞めつけているため、江蘇省はシャドー・バンキング(影の銀行)からの借り入れを急増させている。
データ提供会社ユーズ・トラストによると、2012年に中国で販売された投資信託のうち、江蘇省内の自治体が発行したものは30%を占めた。 同業のウィンド・インフォメーションによると、12年の同省の債券発行額は3430億元で、中国で最も財政が豊かな広東省の3倍に上る。
無錫市だけでも投資信託の発行により92億元を調達し、銀行融資金利の6%を大幅に上回る10%近くのリターンを投資家に与えた。この資金の一部は不動産デベロッパーに土地を売ったり工業団地を建設するために村を更地にする資金に回された。
増大する中国の不良債権において、江蘇省が大きな割合を占めているのも不思議ではないだろう。中国メディアが先月引用した中国人民銀行(中央銀行)幹部の発言によると、2013年1─5月の不良債権増加分の40%を江蘇省が占めた。
中銀や監督当局に政策助言を行っているトリプルTコンサルテイングのマネジングディレクター、ショーン・キーン氏は「モラルハザードの有無を点検するため、ある程度管理されたデフォルト(債務不履行)を起こせば市場は歓迎するだろうが、中国政府にその態勢が整っているかどうかはおぼつかない」と話した。
(Koh Gui Qing記者)
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