キャリーバッグ事故に注意、高額賠償の例も 転倒事故や足の甲を轢くトラブルが発生

拡大
縮小

こうした裁判例から、どんなことがわかるのだろうか。

「歩行者には、次のような注意義務があると読み解けます。

(1)人通りの多い状況下では、人の流れに沿って歩いていたというだけでは注意義務を果たした(損害賠償責任を負わない)とはいえない。前方をしっかりと見て、できる限り他人と接触しないよう注意して歩行しなければならない。

(2)キャリーバッグを後方で曳いて歩く場合には、自分の身体だけでなく、いわば自ら手足の延長として、キャリーバッグ自体も他人に接触しないように注意しなければならない。キャリーバッグを曳かずに歩行している場合よりも、その分、注意義務の質や範囲、リスクが拡大する」

キャリーバッグを曳いているとき注意すべきことは?

キャリーバッグの使用者は、具体的にどんなことに注意すればいいだろうか。

「通常、キャリーバッグは自分の身体の後方で曳いて使用しますよね。比較的、人通りの少ない道路・通路などでは、そのような使い方でも前方を注視して歩いていれば、損害賠償責任を負うリスクは少ないでしょう。

そうした状況下において、後方から歩いてきた人がキャリーバッグに接触し転倒したとしても、それはもっぱら転倒した人の過失であり、キャリーバッグを曳いていた人に過失はないと言えます。

しかし、様々な人の流れがあり、混雑している駅構内や繁華街、店舗内などでは、できる限り損害賠償リスクを減らすため、漫然とキャリーバッグを自らの視野に入らない後方で曳くようなことはせず、自らの身体の前に持ってきて、周り(特に前方)に注意しながら、押して歩くべきでしょう」

伊澤弁護士によると、「注意すべきなのは、歩行中だけではない」という。

「東京簡裁平成16年4月15日判決は、東京駅の改札付近で立ち話をしていた被告が、その後、左側に向かって歩こうとして、瞬間的にキャリーバッグを動かしたところ、キャリーバッグの車輪(コロの部分)が、歩いてきた原告の左足甲の部分を轢き、負傷させてしまったという事案についても、損害賠償責任を認めています。

したがって、立ち止まっていた状態から歩き出す時など瞬間的に違う動作に移る場合にも、まわりの状況をよく確認してから行動に移すことが必要です」

弁護士ドットコムの関連記事
「500万円当選しました」との迷惑メールが届く――本当に支払わせることはできる?
「お兄ちゃんとの禁断のストーリーが始まる!」兄と妹が「結婚」できる場合とは?
電車でうっかり「乗り過ごした」――折り返して戻ったら乗車賃はどうなる?

弁護士ドットコム
べんごしどっとこむ

法的な観点から、話題の出来事をわかりやすく解説する総合ニュースメディアです。本サイトはこちら。弁護士ドットコムニュースのフェイスブックページはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT