東武東上線脱線「台車の亀裂」が原因だった 「亀裂は事故前から」中間報告で明らかに

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ただ、事故の2日前に目視による点検を行った際には亀裂は確認されなかったといい、外側からは見えない内部で亀裂が進んでいたなどの可能性も考えられそうだ。亀裂が発生した原因については現在も調査が続いている。

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脱線した車両の台車側ばりに入った亀裂(提供:東武鉄道)

亀裂が入った台車は、東武によると新日鉄住金製。同タイプや類似した構造の台車は、脱線した車両と同じ10000型車両や日比谷線乗り入れ用の20000型のほか、白地に青ラインの8000型車両の一部にも使われており、総数は2072台車に及ぶ。同社は事故の発生を受け、6月25日までに全数を点検したが、亀裂の発生は確認されなかったという。

東武では、4年または走行距離が60万㎞を超えない期間ごとに行う「重要部検査」と、8年を超えない期間ごとに行う「全般検査」の際に、台車の亀裂を点検する非破壊検査を行っているが、今回亀裂が確認された部分に関しては検査部位となっていなかった。

これまでに亀裂発生事例はなし

同社によると、台車の検査は国交省告示による台車の検査マニュアルや亀裂発生の事例集などに基づいて行っており、これまで特に亀裂の発生事例もなかったことから実施していなかった。事故を受け、同社は亀裂が入ったのと同タイプ、または類似した台車について、10月1日から非破壊検査を実施しているという。

今回の中間報告で、脱線については台車の亀裂が原因との見方が示されたものの、今のところ亀裂が入った原因そのものについてはまだ判明していない。東武は今後も継続して調査を行うとともに、運輸安全委員会による原因究明の調査にも引き続き協力していくとしている。もし台車に構造的な原因があった場合は東武だけでなく、ほかの鉄道各社に影響が広がる可能性も考えられるだけに、今後のさらなる調査の進展が待たれる。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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