デルタ航空、「成田離れ・ソウルシフト」の理由 成田5路線から撤退の一方、ソウル路線を拡充

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デルタが米国で競合する、ユナイテッド航空とアメリカン航空は、それぞれANA、JALと共同事業を展開している。

ユナイテッド・ANA連合は5枠、アメリカン・JAL連合は3枠を確保した。日本に提携航空会社のないデルタの2枠は相対的に見劣りする。

そもそも日米の航空交渉が長引いたのはデルタの強硬な主張があったからだ。「成田の路線を羽田にすべて移管できなければ成田から撤退せざるをえない」。今回羽田へ移管できたのは日米7路線中2路線のみ。今後“成田離れ”が加速するかもしれない。

背景にはデルタの太平洋路線の不振がある。

「太平洋路線は今、極めて競争が激しい。LCC(格安航空会社)も入ってくるとますます難しくなる」(航空経営研究所の牛場春夫副所長)。

デルタの成田路線は、機材繰りや発着時間の集中化により、長年の赤字を2015年に脱したばかり。それでもエド・バスティアンCEOは昨秋の決算会見で、「収益目標に達するには成田ハブでまだやることがある」と一層の路線整理などの可能性を示唆していた。

成田の効率化を進める一方、中国は拡充する。

2015年、デルタは同じ航空連合「スカイチーム」に加盟する中国東方航空に4.5億ドルを出資し、3.55%の株式を取得した。最大手の中国南方航空とも共同運航を始めるなど中国戦略を加速している。

大韓航空と急接近

そんな中、今年9月に入り、今度は韓国路線の強化を発表した。ソウル(仁川<インチョン>空港)と米国を結ぶ路線は現在2つだが、来夏にソウル─アトランタの直行便を就航する。さらにはスカイチームに属する大韓航空との提携を拡大。今冬、ソウル─米国線の共同運航を、現在の6路線から8路線へ増やす。

注目すべきは、仁川を経てアジアへ飛ぶ路線で、大韓航空との共同運航便を大幅に拡大することだ。これまで22だった同路線の乗り入れ都市数を、今冬から関西や台北などを含む32へ拡充する。デルタが今回撤退する成田─バンコク線、成田─関西線を代替する意味合いも持つ。成田に残るほかの以遠権路線も、仁川からの共同運航に代わる可能性を秘めている。

つまり、デルタにとってのアジアのハブ空港は、現在の成田から韓国・仁川へ移る可能性が一気に高まったのだ。近年、乗り継ぎ需要が減少傾向にあった仁川は、従来からデルタのハブ移転を歓迎すると公言している。

「デルタは仁川にハブを作りたがっており、そのためには大韓航空の強いサポートが必要だ」と分析するのは、豪航空シンクタンクのCAPAのシニアアナリスト、ウィル・ホートン氏だ。これまではデルタが一方的に提携を求めるなど、両社の関係は決して良好ではなかった。ただ「今後のアジア─米国間の航空市場の成長性を考え、ここに来て初めて大韓航空側から接近している」(ホートン氏)。

ユナイテッド・ANA、アメリカン・JALのような提携関係を、大韓航空と築ければ、デルタにとってアジアでの大きな一歩となる。こうしたデルタのハブ再構築は、新たなジャパンパッシング(日本素通り)の始まり、になるのかもしれない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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