「アメリカ経済の回復」は、これからが本番だ 投資家が迷う今こそ「リスク資産」の買い時

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ここで最初の2つは時間が解決する問題であるが、後ろの2つは構造変化を意味していることに注意したい。つまり今のところ、賃金が増えても消費を増やさず貯蓄に回すことがごく一時的なのか未来永劫なのかがよくわからないのだ。

私は今のところ、消費が盛り上がらない理由は前の2つが大きく、(3)は少しあるかもしれないが(4)はなさそうだと見ている。

経済情勢が厳しい時代に社会人になった世代が他の世代よりも貯蓄率が高い傾向はあるようだが、(4)のように全体として価値観が変わった例を見出すことは難しい。それゆえ、消費回復は時間の問題としてとらえている。いつ頃感覚が正常化するのかについては、3年とかではなく3カ月とか6カ月であろうと想定する。

今がまさにリスク資産の購入タイミング

米国の消費拡大が始まれば、ドル高、輸入増、日欧の輸出増加、生産国の製造業回復、資源国の活性化、世界需要の拡大の好循環を順次期待できるようになる。これで、いよいよ長かったリーマンショックからの世界的な正常化が最終段階を迎える。世界経済の基調は右肩上がりだ。トレンドが強い中でサイクルが弱い現状は、日本株や米国株などリスク資産の購入の良いタイミングだと判断する。

ただ、市場にとってのリスクのひとつに米国の政治の行方がある。大統領選の結果はまだ分からないが、クリントン氏が選ばれれば不確実性が減り、トランプ氏となれば、自由貿易を好まずドル安を志向するかもしれない。

より長期的な懸念材料は、トランプ旋風が示した既存の政治家やエスタブリッシュメントへの幅広い嫌悪だ。政治家の発言は説得力を失い、TPPは先送りされ、地政学的な不安定要素への対応が遅れがちになろう。そうなれば石油価格、クレジット関連市場、資源国やひいては先進国の為替や金利の変動が大きくなりやすい。

リスク資産買い入れのタイミングをうかがう、またリスクシナリオを分析する、いずれにせよ、その成否に決定的な影響を及ぼすのは、米国の政治経済の行方いかんとなる。投資を考えるにあたっては、くれぐれも米国の重要性を過小に考えることのないよう注意しなければならない。

神山 直樹 日興アセットマネジメント株式会社 チーフ・ストラテジスト

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Naoki Kamiyama

日興アセットマネジメント株式会社 チーフ・ストラテジスト
1985年日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興アセットの前身である日興国際投資顧問株式会社を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社やモルガン・スタンレー証券株式会社、ドイツ証券株式会社などにてチーフ・ストラテジストなどを歴任。2015年1月に日興アセットマネジメント入社、現職に就任。幅広い資産クラスの市場分析・予測を行なうとともに、機関投資家ならびに個人投資家のお客様を対象として投資情報や運用戦略等を発信する。「KAMIYAMA Reports」を随時発信。

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